政治・経済

なぜ税収は過去最高を更新し続けるのか?“名目GDP”のカラクリと財政の真実

taka

多くの人が悩んでいる「実質賃金は下がっているのに、なぜ税収は過去最高なのか?」という疑問。今回は、そのカラクリと日本の財政に潜む“本当の問題”をわかりやすく解説します。

2025年7月1日、財務省は2024年度の一般会計決算で、税収が前年比で3兆円以上増え、過去最高の75兆円に達したと発表しました。なんと、これで5年連続の税収最高更新です。

しかし、不思議なのは、実質賃金が40カ月以上連続で下がっている中で、なぜ税収だけが伸び続けているのかということ。これには「名目GDP」と「GDPデフレータ」の動きが大きく関係しています。

日本経済は現在、実質GDP(=物価変動を除いた成長率)はほとんど伸びていません。ここ数年の平均成長率はわずか0.85%程度。ところが、名目GDP(=物価込みの経済規模)は平均4.29%もの成長を記録しています。

なぜかというと、GDPデフレータ(物価水準の変化を示す指標)が上昇しているからです。2023年第1四半期以降、このGDPデフレータの平均は3.42%。これはバブル期を超える水準です。

つまり、生産量や賃金がほとんど増えていなくても、物価が上がっているため、国全体の「お金の総額」(=名目GDP)が増えている。そして税収は、この「金額の合計」に対してかかってくるため、自動的に税収も増えていくというわけです。

でも、これで国民が豊かになっているかというと、答えは「ノー」です。

  • 国全体の所得(名目GDP)は増えても、物価が上がっているため実質的には豊かになっていない
  • 実質賃金が下がっているのに税金だけが増えている
  • 物価上昇の原因は需要拡大ではなく、供給力の低下(サプライロス)
  • それでも名目GDPが伸びていることで、政府債務対GDP比率は下がっている

ここで注目すべきなのが、「政府債務対GDP比率」が下がっているという事実です。この比率は「政府の借金÷名目GDP」で計算されるため、名目GDPが拡大すれば自然と下がっていきます。

この構造を見ると、財務省がこだわってきた「PB黒字化目標(基礎的財政収支を黒字にする)」の根拠は、すでに崩れているのではないでしょうか。

そもそもPB黒字化は、「デフレで名目GDPが伸びない状況下で、政府債務対GDP比率を下げるため」に掲げられた財政目標でした。しかし現状、物価上昇で名目GDPが増えているため、PBを黒字化しなくても比率は下がっていきます。

にもかかわらず、財務省はPB黒字化に固執し続け、財政支出の拡大や減税政策を封じてきました。その結果、需要不足が続き、名目GDPの拡大が抑えられていたのです。

つまり、過去に政府債務対GDP比率が上昇したのは、財務省がPB黒字化にこだわり、必要な財政政策を打てなかったから。デフレを引き起こし、結果的に分母である名目GDPが増えず、比率が上昇してしまったのです。

この状況を利用し、「債務比率が高いからPB黒字化が必要」と繰り返す財務省の論法は、いわば“自己矛盾”そのもの。ここまでの流れを見れば、これが非常に巧妙な「数字の詐欺」であると疑われても仕方がないでしょう。

今こそ、政府はこのPB黒字化目標を破棄し、本格的な減税と財政支出拡大に踏み出すべき時です。なぜなら、実際には国民が豊かになっていない中で、税金だけがどんどん取られているからです。

物価上昇に対して名目GDPが増えていくならば、むしろ今こそ政府が支出を増やし、インフラ投資や減税を通じて経済を本格的に回すタイミングです。

この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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