政治・経済

レバノンがドル建て国債にこだわる理由とは?財政破綻を招く「固定相場制」の裏事情

taka

多くの人が悩んでいる「なぜ途上国はドル建ての借金を抱え、財政破綻に陥るのか?」という疑問。今回はその解決策や背景を、レバノンの事例を中心にわかりやすく解説します。


アルゼンチンとレバノン、共通の「ドル建て国債」依存

2001〜2002年、アルゼンチンはドル建て国債の返済が困難となり、アルゼンチン・ペソが暴落。結果的に、GDPに対する債務比率が急上昇し、国家は事実上のデフォルトに陥りました。

実は、2020年のレバノンも似たような状況に。ドル建て国債の返済不能により、レバノン・ポンドの価値が急落し、輸入コストが急騰。国民生活を直撃しました。

このように、ドル建て国債を抱える国では、自国通貨が暴落するとその分だけ債務の「実質的な重さ」が増し、財政が一気に悪化するのです。


なぜ途上国はドル建て国債を発行するのか?

「自国通貨建てで借金すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、そこには理由があります。レバノンのような発展途上国は、生産力が乏しく、自国内だけでは国民の需要をまかないきれません。そのため輸入に頼らざるを得ず、結果として貿易赤字が拡大します。

実際、2023年のレバノンはGDP約200億ドルに対し、貿易赤字がなんと140億ドル。GDPの7割にも達しています。

こうした国が変動為替相場制を採ると、自国通貨はどんどん下落。輸入物価は跳ね上がり、インフレが止まらなくなります。だからこそ、レバノンは「対ドル固定相場制」を選択していたのです。


固定相場制を維持するための「苦肉の策」

固定相場制とは、たとえば「1ドル=1500レバノン・ポンド」と政府が為替レートを固定する制度。しかし、それは宣言するだけで成立するものではありません。

市場では日々、レバノン・ポンドがドルに交換されようとするため、放っておくと需要と供給のバランスでポンド安が進行してしまいます。

これを防ぐには、政府や中央銀行が市場に介入し、外貨(ドル)を使ってポンドを買い支えなければなりません。しかし、外貨準備が足りなければそれは不可能です。

そこでレバノン政府は、外貨を調達するために「ドル建て国債」を発行。それをもとに為替介入を続けていたのです。つまり、固定相場制の裏側では、国が「ドルの借金」を増やしてバランスを保っていたというわけです。


借金が回らなくなったとき、何が起きるのか?

ドル建て国債には返済期限があります。返済期が来たら、また新たなドル建て国債を発行して借り換えなければなりません。

しかし、経済状況が悪化して信用を失うと、その借り換えもできなくなります。結果、外貨準備は尽き、固定相場制は崩壊。自国通貨は暴落し、債務は実質的に膨張。こうして国家は財政破綻へと追い込まれていきます。


自国通貨建て国債だけなら、破綻はしない?

一方で、日本のように「自国通貨建ての国債」しか発行しておらず、かつ変動相場制を採っている国は、為替リスクを抱えません。極端な話、どれだけ国債が増えても、自国通貨を発行することで返済が可能です。

実際、日本政府も公式にこう述べています:

「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」(財務省)

これはつまり、日本が財政破綻することは「あり得ない」ということなのです。


国債は本当に「借金」なのか?

国債と聞くと「国の借金」と思われがちですが、実は本質は違います。国債は、政府が市中銀行から日本銀行の当座預金を調達し、それを担保にして国民の銀行口座に振り込む「貨幣供給の仕組み」でもあります。

なぜ政府は直接私たちの口座に振り込めないのか? それは私たちが日銀に口座を持っていないからです。だから、民間銀行を介してお金を回す仕組みになっているのです。


まとめ:レバノンと日本の「通貨と債務」の決定的な違い

レバノンのように「外貨建て債務+固定相場制」の国は、通貨暴落で債務が実質的に膨張し、財政破綻のリスクが高まります。

一方、日本のように「自国通貨建て債務+変動相場制」の国は、理論上、デフォルトのリスクが極めて低く、財政破綻は「できない」のです。

この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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