国家間の相互依存が招く「相互破滅」の罠
連鎖する事業停止と合成の誤謬
石油製品の原料であるナフサの供給不安が広がる中、サプライチェーンの各業者が「万が一に備えて、少し多めに備蓄しよう」と動いている。各企業が危機に備えるのは合理的な判断である。しかし、全員が同時にその行動をとった結果、最終製品が全く手に入らなくなり、事業の停止が連鎖する事態が起きている。個人の合理的な行動が、マクロの視点では全体にとんでもない結果をもたらしてしまう。これこそが「合成の誤謬」と呼ばれる恐ろしい現象である。
「海外で作ればいい」という幻想
かつて、世界が平和で覇権国が海の安全を保障していた時代、日本の食料自給率の低さに対し、ある主張がもてはやされた。「国内の農家を保護するのではなく、海外の農地を買い、そこで作らせた農産物を輸入し続ければいい」というものだ。今にして思えば、これは財務省の緊縮財政を無自覚に後押しする、あまりにも危機感に欠けたグローバリズムの幻想であったと言わざるを得ない。
崩壊した湾岸諸国の食料モデル
実は、この「海外の農地頼み」を国家戦略として実践していた国々がある。アラブ首長国連邦などの湾岸諸国である。彼らは外国への投資で農地を確保し、自国から肥料を輸出する代わりに食料を輸入するという「持ちつ持たれつ」の相互依存関係を築き上げた。しかし、地政学的なリスクが高まり、海上輸送の要衝であるホルムズ海峡の通過が危ぶまれた途端、この合理的に見えたモデルは脆くも崩れ去ろうとしている。
相互依存は「相互破滅」へ直結する
海峡の輸送に不安が生じた結果、湾岸諸国は食料が輸入できなくなり、農業国側も肥料が手に入らず農産物を生産できなくなった。まさに共倒れである。人間や企業ならともかく、国家間の過度な相互依存は、有事の際に「相互破滅」へと直結する致命的なリスクをはらんでいることが証明されたのだ。結局のところ、いざという時に国家と国民の命を繋ぐのは、自国の供給能力を高め、国内で何とかする力に他ならないのである。
