物価高でも「デフレ脱却宣言」が出ない真の理由
インフレの錯覚と隠れた危機
ここ数年、スーパーのレジで支払う金額が目に見えて増え、日本もついにデフレを脱却したと感じている人は多いだろう。実際、消費者物価指数はこの4年間で11%以上も上昇している。しかし、政府はいまだに正式な「デフレ脱却宣言」を出していない。なぜか。それは、現在の物価上昇が「本物」ではないからである。 今のインフレは、海外からの輸入物価の高騰と、コロナ禍の一時的な給付金によって引き起こされた、いわば「一時的な熱」に過ぎないのだ。
企業のため込みと冷え込む家計
経済の根幹を支える企業は、いまだに積極的な投資を控え、資金を内部にため込む「貯蓄超過」の状態にある。本来、企業がお金を借りて投資をしなければ、世の中にお金は回らず、デフレ圧力は消えない。 一方の家計も、コロナ禍の給付金を使い果たし、すでに余力は残されていない。これ以上の値上げが続けば、人々は買い物を控え、消費は確実に冷え込む。政府や日銀は、このままではいずれ物価上昇率が目標の2%を下回り、再びデフレの泥沼へ逆戻りするリスクが高いと冷静に見抜いているのである。
安定した2%インフレへの道筋
では、輸入物価などの外部要因に頼らず、日本の内需の力だけで安定的に「2%の物価上昇」を実現するにはどうすればよいのか。鍵となるのは「需要と供給のバランス」と「世の中に回るお金の量」である。 現在のゼロに等しい需要を意図的に引き上げ、買いたいという需要が供給を上回る「需給ギャップ2%」の状態を作ること。同時に、企業と政府が積極的にお金を使い、「ネットの国内資金需要をマイナス5%」程度まで拡大させること。この二つの圧力を組み合わせることで、初めて賃金上昇を伴う健全なインフレが定着する。
暴走を防ぐ緻密なコントロール
一部には、需要を刺激しすぎるとハイパーインフレになるという懸念もある。しかし、欧米のように資金需要をマイナス15%といった異常な水準まで膨張させない限り、その心配は杞憂に過ぎない。 データを緻密に分析し、需給ギャップ2%、資金需要マイナス5%という「適温」をコントロールしながら高圧経済を維持する。それこそが、日本を構造的なデフレから完全に救い出すための、最も現実的で責任ある経済政策といえる。
