リハビリ関連

膝内側部の圧痛点とマルアライメントの関係:評価と臨床応用

taka

はじめに

膝関節の内側部痛は、スポーツ障害から変性疾患まで幅広いケースで認められます。その多くは圧痛点の存在部位を明確にすることで発痛源の特定が可能となります。

特に膝内側部の圧痛は、**マルアライメント(malalignment)**の影響を受けていることが多く、下肢の力学的ストレスを理解することが治療戦略に直結します。


膝内側部における代表的な圧痛点

膝内側部で圧痛が認められる代表的な組織は以下の通りです。

  1. 内側広筋
    • 膝蓋骨の内側安定性を担う筋
    • 短縮や滑走性低下で膝蓋骨の動態が乱れる
  2. 内側膝蓋支帯
    • 膝蓋骨の内外動態を制御する組織
    • 膝蓋骨外方偏位やPF関節障害で圧痛が出やすい
  3. 膝蓋下脂肪体(IPF)内側部
    • 炎症や癒着によって膝前部〜内側部痛を誘発
  4. 内側関節裂隙部
    • 内側半月板損傷やOAで圧痛が好発
  5. 内側半月板辺縁部
    • 外反ストレスや捻転負荷で損傷しやすい部位
  6. 内側側副靭帯(MCL)
    • 内反外力やスポーツ外傷で損傷しやすい
    • 部分損傷でも圧痛が長期に残存することがある
  7. 鵞足付着部(鵞足炎)
    • 半腱様筋・薄筋・縫工筋の共通付着部
    • ランナーやジャンパーに多い
  8. 半腱様筋腱
    • 過負荷や滑走障害で圧痛を呈する

マルアライメントと膝内側部痛の関係

膝内側部の圧痛は、単なる局所の炎症や損傷だけでなく、下肢アライメントの乱れが背景に存在することが多いです。

下腿外旋の影響

  • 下腿が外旋すると、膝内側支持機構(MCL・内側広筋・鵞足付着部など)に過剰な負荷がかかる
  • 結果として内側部痛を助長し、圧痛が出現

大腿部と下腿部の関係性

  • 大腿骨と脛骨の相対的位置関係を観察することが重要
  • 特に歩行やスクワットなど荷重下動作での下腿の運動方向を見逃さないこと

臨床での評価ポイント

  1. 圧痛点の特定
    • 各組織を順に触診し、圧痛の強度と広がりを確認
  2. 下肢アライメント評価
    • 静的:膝外反・内反、回旋位
    • 動的:歩行、階段昇降、スクワットでの下腿運動方向
  3. 滑走性の評価
    • 内側広筋や鵞足腱の滑走障害を確認
    • IPFや膝蓋支帯の柔軟性も同時に観察

臨床応用:治療の方向性

1. 圧痛部位へのアプローチ

  • 徒手療法による滑走性改善(筋膜リリース、モビライゼーション)
  • 炎症が強い場合は冷却・安静を併用

2. アライメント改善

  • 内反・外反、下腿回旋の修正
  • 必要に応じてインソールを使用し、荷重線を補正

3. 筋機能の再教育

  • 内側広筋を中心とした膝蓋骨安定化エクササイズ
  • 股関節外旋筋や殿筋群の強化で膝外反ストレスを軽減

4. 動作指導

  • ランニングやジャンプ着地のフォーム修正
  • 日常生活動作での荷重方向を適切に調整

まとめ

  • 膝内側部の圧痛は、内側広筋・膝蓋支帯・MCL・半月板・鵞足腱など多くの組織に関連する
  • 下腿外旋は内側支持機構への負荷を増大させ、内側部痛を助長する
  • 臨床では「圧痛点の特定+マルアライメント評価」が不可欠
  • 治療は、局所アプローチとアライメント修正、筋機能再教育を組み合わせることが有効

膝内側部痛を的確に評価し、動作全体の中で原因を捉えることが、臨床効果を最大化するための重要な視点です。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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