私たちは時折、「自分はまだ本気を出していない」と言い訳をして、やるべきことを先延ばしにしてしまいます。頭の中では「いつかやる」と思っていても、気づけば時間ばかりが過ぎ、結局何も形になっていない――そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
古代ローマの哲学者エピクテトスは『語録』の中で、私たちにこう語りかけます。
「過去のことは忘れよう、とにかく始めなければ」
この一言は、先延ばしの癖や不安にとらわれる心を揺さぶる力を持っています。
子どもの頃の「言い訳」と大人の責任
思い返せば、子どものころは失敗しても「どうってことない」と笑ってごまかせました。試験で点数が取れなくても、スポーツの大会で負けても、「本気を出していなかったから」と言い訳すれば、プライドを守ることができたからです。
しかし大人になると状況は変わります。挑戦や努力を避けてしまえば、その結果は「人生の質」や「社会を生き抜く力」に直結します。もう「どうってことない」では済まされないのです。
それでも多くの人が、心のどこかで失敗を恐れ、最初の一歩を踏み出せずにいます。
「仕事を始めよ」というエピクテトスの教え
エピクテトスは、人生の師としての役割を自覚していました。彼の目的は、弟子たちが「自由に、快活に、幸福に生きる」よう導くこと。
そのために必要なのは、特別な才能でも複雑な計画でもありません。彼が求めたのは実にシンプルなこと――「とにかく仕事を始める」ことでした。
私たちの仕事は、自分を仕上げること。障害や衝動に振り回されず、何ものにも縛られない心を育てること。そして、そのためには「過去を振り返るのではなく、今から始める」という決断が欠かせないのです。
世界最良の教師は「哲学」
もしも「自分にできるだろうか」と不安になるなら、心強い事実を思い出してください。あなたにはすでに「世界最良の教師」がついています。それは、古今東西の偉大な哲人たちの言葉です。
セネカ、マルクス・アウレリウス、ムソニウス・ルフス、そしてエピクテトス――彼らの思想は、時代を越えて私たちの背中を押してくれます。
「始めなさい。あとはどうにかなる」
このシンプルなメッセージを胸に刻むだけで、不思議と前に進む力が湧いてきます。
本当の仕事を始めるための3つのステップ
では、どうすれば「気持ちを入れ替えて始める」ことができるのでしょうか。実践的なヒントを3つ挙げてみます。
- 小さな行動から始める
完璧な計画を立てようとすると、かえって動けなくなります。机を片づける、5分だけ取り組む、メールを1通送る――そんな小さな一歩で十分です。 - 「今」に集中する
過去の失敗を悔やむ必要も、未来の結果を心配する必要もありません。エピクテトスが言うように、仕事は「今この瞬間から」始めるものです。 - 失敗を恐れない
失敗は避けられないものですが、それを通じて学び成長することこそが「本当の仕事」です。むしろ挑戦しないことの方が、人生において大きな損失となります。
「あとはどうにかなる」という信頼
エピクテトスの言葉の魅力は、徹底的な現実主義にあります。人間の限界も弱さも理解した上で、それでも「始めること」が唯一の解決策だと説いているのです。
「準備が整ってから」ではなく、「整っていなくても」始める。すると不思議なことに、状況は動き出し、必要なものが少しずつ揃っていきます。
これは決して根拠のない楽観主義ではありません。人間が行動を通じて変わっていく存在であることを、深く理解していたからこそ言える言葉なのです。
まとめ
エピクテトスの教えから学べるのは、次のようなシンプルで力強いメッセージです。
- 過去を振り返らず、とにかく始めること
- 本気を出さないという言い訳を捨てること
- 哲学という「教師」を信じて行動すること
- 始めれば、あとはどうにかなる
本当の仕事とは、自分自身を磨き、自由で快活な生き方を実現すること。その第一歩は、今日、今すぐにでも踏み出すことができるのです。
👉 まずは「5分だけでも始める」と決めてみましょう。エピクテトスが語るように、その小さな一歩があなたの人生を大きく変えるかもしれません。