私たちの人生は、日々の選択によって形づくられています。大きな決断から些細な習慣に至るまで、私たちは常に「どちらを選ぶか」を迫られています。しかし時に、人は「自分には選択の余地がない」と感じ、状況や環境に流されてしまいます。
古代ローマの哲人エピクテトスは、『語録』の中でこう語ります。
「法官の席も、牢獄も、どちらもひとつの場所であることに違いはない。一方は高く、他方は低いのであるが、どちらの場所でも、君がそう望むならば選択の自由を失うことはない」
これは、どんな境遇に置かれても「選択の自由」は失われない、という強いメッセージです。
境遇は違っても、自由は同じ
ストア派の哲学者たちは、実にさまざまな環境から人生を歩み始めました。裕福な家庭に育った者もいれば、奴隷として生まれた者もいます。栄光を手にした者もいれば、絶望的な苦境に立たされた者もいました。
現代の私たちも同じです。経済的に恵まれている人もいれば、厳しい状況にある人もいる。順風満帆な時期があれば、思うようにいかない時期もあります。
しかし、どんな環境であっても「自分で選ぶ力」だけは誰にも奪われません。状況をどう受け止め、どう行動するか――その自由は常に残されています。
コントロールできることに集中する
エピクテトスが強調したのは、「自分の力でコントロールできること」に集中する姿勢です。
- コントロールできること:考え方、判断、行動
- コントロールできないこと:他人の評価、社会の出来事、運の良し悪し
たとえ牢獄にいようとも、心の持ち方や態度を選ぶ自由は残されています。逆に、法官として高い地位にあっても、心の自由を失えば不幸に陥ります。
選択の積み重ねが人生をつくる
今日の選択は明日の自分を形づくります。
- 苦しい状況で「投げ出す」か「踏ん張る」か
- 批判を受けて「落ち込む」か「学びに変える」か
- 成功を「傲慢さ」につなげるか「感謝」に変えるか
この小さな分岐点の積み重ねが、人生の質を決定します。だからこそ、どんな環境にあっても「私は何を選ぶのか?」と自分に問い直すことが大切です。
選択の自由を実感するための3つの習慣
では、どうすれば「自分には選択の自由がある」と日常で実感できるのでしょうか。ここでは簡単に取り入れられる習慣を紹介します。
- 一呼吸おいて選ぶ
感情のままに反応するのではなく、深呼吸してから判断する。わずかな間が「自由な選択」を生み出します。 - 小さな選択に意識を向ける
「今日の服を選ぶ」「通勤ルートを変える」など、日常の小さな場面で選択の自由を意識しましょう。 - 自分の基準を持つ
他人の意見や社会の常識に流されず、「自分はどうしたいか?」を基準に選ぶ習慣をつけましょう。
曇りなき精神は選択から生まれる
エピクテトスは「曇りなき精神」として、常に選択の自由を意識することを説きました。
人生には浮き沈みがあります。数年前は順調でも、今は苦境にいるかもしれない。逆に、今がどん底でも、数日後には状況が好転するかもしれません。
しかし変わらないのは、「今この瞬間にどんな選択をするか」です。
- 苦境にいるなら、そこから何を学ぶかを選べる
- 成功しているなら、どう生かすかを選べる
- 未来に不安があっても、今をどう過ごすかを選べる
この連続が、あなたの人生そのものになるのです。
まとめ
エピクテトスの教えは、私たちにこう問いかけます。
- 君は今、どんな選択をしているか?
- それについてどう思うか?
- どうすればいちばん良い選択ができるか?
境遇や状況は人それぞれですが、「選択の自由」だけは誰にでも与えられています。大事なのは環境そのものではなく、そこから何を選び取るかです。
👉 今日の小さな選択を「自分で選んだ」と意識してみましょう。その積み重ねが、あなたの人生をより主体的で豊かなものにしていきます。