「結婚とは三つの幸せを育むもの:アドラー心理学が語る理想のパートナーシップとは」
結婚を三層で捉える意義
1. 夫婦(お互い)の幸せ
まず、結婚が「二人にとっての幸せ」であることは、最も直感的で伝統的な捉え方でしょう。互いの人生を支え合い、喜びも苦労も分かち合う関係性です。ただし、それだけで「いい結婚」が保証されるわけではありません。二人の幸せだけに注力すると、他の要素(子ども・社会)との不整合が生じやすくなります。
アドラー心理学においては、人は「他者との関係性」の中で生きる存在と考えられます。「共同体感覚(community feeling)」は、自己と他者のつながりを感じる能力・姿勢を意味します。人は他者と深くつながり、貢献・協力し合うことで生きがいや意味を感じうる。
したがって、夫婦がただ「自分が幸せになる」方向に向かうだけでは、アドラーが重視する“共同体感覚”が育まれず、閉鎖的・自己中心的になってしまう危険があります。
2. 子どもにとっての幸せ
次に、子どもの視点です。結婚=家族という枠組みを前提とするなら、子どもが生まれる可能性は高く、その成長環境は親の関係性に大きく依存します。子どもが安心して育つこと、心身ともに健全に育つこと、親から愛情と模範を受けることは、社会にとっても価値あることです。
もし夫婦関係が不安定だったり、対立が激しい場合、子どもの発育や心理面に悪影響を及ぼすことは多くの研究で示唆されています。ですから、「夫婦の幸せ」だけを追求しても、子どもを考慮しなければ、家族という観点での“幸せ”は不完全になりかねません。
3. 社会にとっての幸せ
最後に、結婚という選択や維持は、個人・家族レベルだけでなく、広く社会的な影響ももちます。少子化、地域コミュニティの希薄化、社会福祉負荷、家族制度の変化など、結婚・家族のあり方は社会構造と結びついています。
実際、『人生の意味の心理学(下)』では「愛と結婚」が社会的文脈の中で論じられていることが知られています。
つまり、結婚は「個人的な幸福追求」の枠を超え、共同体・社会との関わりや責任を含んだ選択であるという視点がアドラー心理学の論脈にはあります。
三者視点を統合するためには?――原理と実践
三つの視点(夫婦・子ども・社会)をバランスよく見るには、次のような原理と具体的な実践が考えられます。
原理的視点:貢献と協力、利他性
アドラー心理学では、人は「どのように他者に関心を持つか」「どのように貢献できるか」が、人生に意味を与える核とされます。
結婚においては、単なる利己性ではなく、相手の幸福・子の幸福・社会への貢献を志向する「利他性」や「協力」の態度が不可欠となります。
「自分がどう得するか」ではなく、「相手に何を与えられるか」を問う姿勢は、健全な結婚関係の基盤になります。実際、結婚がうまくいかない典型例として、“自分の要求を押し通すこと”ばかり考える姿勢が挙げられています。
実践的アプローチ例
- 価値観の共有・明文化
結婚前・結婚初期に、「どんな結婚をしたいか」「子どもをどう育てたいか」「社会との関わりをどこまで持つか」など、夫婦で価値観を言語化しておく。目標をすり合わせることで後のズレを防げる。 - 定期的な振り返りと対話
夫婦として、子育て視点、社会的な視点を含んだ「この結婚はどう進んでいるか」の振り返りを定期的に行う。関係がずれてきたら修正できる余白を持つ。 - 共同での社会的活動
ボランティア、地域活動、学校行事への参加など、夫婦として外に向かう活動を共有する。これにより、社会との接点を持ち、共同体感覚を育てやすくなる。 - 子どもへの関心と責任
子どもの視点を常に意識する。「親としてどうあるべきか」「子どもにどのようなモデルを示すか」を念頭に、夫婦関係の扱い方を調整する。 - 役割・負担の分担と柔軟性
家事・育児・仕事・地域活動などの役割分担を固定的にしすぎず、状況に応じて調整する。硬直した役割分担は不満を生みやすい。
限界と注意点も見ておこう
この三層的視点は理想的ですが、現実には多くの制約があります。たとえば、経済的制約、文化・習慣、地域差、親の期待、社会インフラなどです。また、「三層すべてを満たすこと」を目指すと、かえって無理や葛藤が生じることもあるでしょう。
重要なのは、「三層を意識する」というマインドセットを持つこと。その意識があるかないかで、ズレが生じたときの修正ができるかどうかが変わってきます。
また、どの視点を重視するかは人生のフェーズによって変わることもあります。たとえば子育て期には子どもの視点が強くなる時期もあるでしょう。その中で他の視点を完全に犠牲にしないよう、意識し続ける姿勢がポイントです。
締めに:この言葉が問いかけるもの
「お互い・子ども・社会の幸福」という三者の視点を結婚という枠組みに持ち込むこの言葉は、とても重みがあります。ただ「好きだから結婚する」「共同生活を送る」というだけでなく、人生全体を見据えた選択としての結婚を問う言葉です。
あなたがこの言葉を引用された背景には、何か心に響くものがあったのではないでしょうか?
もしよければ、この言葉をテーマに「自分やパートナー、子ども、社会との関わり方」について一緒に深めていくリライトや発展記事もできますので、そちらもご希望あればおっしゃってください。
