「甘やかされた子どもはなぜ好かれないのか──アドラー心理学が語る“共同体感覚”の欠如」
甘やかされた子どもはなぜ好かれないのか
アドラー心理学は次のように指摘します。
「甘やかされた子どもが学校では同級生から好かれないというのは本当のことだ」
これは単なる偏見ではなく、人間関係の本質に基づく観察です。
甘やかされた子どもは、家庭で「自分の要求はすぐに通る」という環境に慣れています。すると、学校や社会で他者との協力を求められたときに戸惑い、次のような態度を取りがちです。
- 自分中心にふるまう
- 自立できず、他者に頼りすぎる
- 自分の思い通りにならないと不満を表す
こうした行動は自然と仲間から距離を置かれる原因になります。
子ども同士の世界にも「共同体感覚」がある
アドラー心理学が強調するのは、 人間は本能的に「共同体を求める存在」である という点です。
小学校であっても、子どもたちの間には「仲間とつながりたい」「結びつきを持ちたい」という傾向がすでに見られます。これは単なる大人の社会性の模倣ではなく、 人間に備わった根本的な能力・習性 なのです。
だからこそ、その輪に加わるためには「協力的であること」「自立していること」が求められます。甘やかされて育ち「自分中心」である子どもは、この輪の中で浮いてしまうのです。
甘やかしが生む誤学習
甘やかしは、子どもに次のような「誤った学び」を植えつけます。
- 「人は自分のために存在する」
→ 他者の気持ちや立場に関心を持てない。 - 「努力せずとも欲しいものは手に入る」
→ 我慢や工夫を学べず、問題解決力が育たない。 - 「愛される=要求が通ること」
→ 人間関係を「支配・服従」の枠組みでしか理解できない。
その結果、仲間と健全な関係を築くことが難しくなり、からかわれたり孤立したりしやすくなります。
子どもを「共同体感覚」に導くために
1. 家庭で「協力」を経験させる
家事の手伝いや役割を与えることは、共同体感覚を育てる絶好の機会です。
「自分も家族の一員として役に立っている」と感じられれば、他者との協力に前向きになります。
2. 「自分でやる」経験を増やす
甘やかす代わりに、小さな挑戦を任せましょう。靴をそろえる、宿題を計画的に進める、友達に謝る──こうした経験が自立心を育てます。
3. 他者への関心を育む声かけ
「お友達はどんな気持ちかな?」「みんなでやったらどうなるかな?」と問いかけることで、子どもは他者を想像する習慣を持てます。
4. 失敗を恐れず挑戦を支える
共同体感覚は「勇気づけ」と直結しています。失敗を責めるのではなく、「挑戦してよかったね」と伝えることで、子どもは仲間とのつながりに前向きになります。
親が甘やかす背景を理解する
親が子どもを甘やかすのは「子どもに苦労させたくない」「嫌われたくない」という気持ちからです。
しかし、その結果「社会で好かれにくい子ども」になってしまうのでは本末転倒です。
アドラー心理学は「課題の分離」を提案します。親の安心や承認欲求を満たすために子どもを甘やかすのではなく、子どもの自立のために必要な経験をさせることこそが、本当の愛情です。
まとめ
『教育困難な子どもたち』に示されるアドラー心理学の教えは明快です。
「甘やかされた子どもは、仲間から好かれにくい」
その理由は、共同体感覚が育たず、自立できないまま自己中心的になりやすいからです。
人間は小学校の段階からすでに「共同体を求める」存在です。その輪に入るためには、協力・自立・勇気が欠かせません。
親や教育者ができることは、子どもに「仲間の中で生きるための練習」を家庭や学校で積ませること。
それが、甘やかしによる弊害を防ぎ、健全な人間関係を築ける子どもを育てる最良の方法なのです。
