「売れない商品をどう売るか?──『エスキモーに氷を売る 新版』に学ぶ逆転のマーケティング戦略」
「売れない商品を売る」難題に挑んだ一冊
「うちの商品は悪くないのに、なぜ売れないのだろう?」
営業やマーケティングに携わる人なら、一度は抱いたことのある悩みかもしれません。
そんな悩みを真正面から扱ったのが、スポールストラ・ジョン著の 『エスキモーに氷を売る 新版』 です。
タイトル通り「氷に困らないエスキモーに氷を売るような難題」をどう解決するのか──実際のビジネス現場での奮闘を描いた本です。
舞台はNBA弱小チーム「ニュージャージー・ネッツ」
本書の中心となるのは、著者がコンサルティングを任されたNBAチーム ニュージャージー・ネッツ のストーリーです。
当時のネッツは、
- チーム成績はリーグ最下位クラス
- 観客動員数も最下位
- 地元ニュージャージーのファンからも愛されない
- 経営体制はバラバラ
まさに「誰も買いたくない商品」を抱えた状態でした。
そんな状況をどう立て直すのか──ここに本書の醍醐味があります。
驚くほどシンプルなマーケティング戦略
著者が打ち出した戦略は、実は驚くほどシンプルです。
1. ターゲットを見極める
「誰でもいいから来てほしい」と考えるのではなく、
「自社の商品に関心を持つ人」だけに集中する。
これが最大のポイントでした。
例えばネッツの場合、スター選手を擁するニューヨーク・ニックスと競っても勝ち目はありません。
そこで著者は「ニュージャージー北部の地元ファン」「家族で楽しみたい観客」に絞り込んだのです。
2. 既存顧客を徹底的に活用する
「新しいファンを見つけるより、今いるファンにもう一度来てもらう」
これを徹底するために、過去のチケット購入者のデータを集め、電話やDMで直接アプローチしました。
テレビや新聞広告に莫大な費用を投じるのではなく、 すでに関心を示した人たちを再び呼び込む。
即効性のある「起死回生の一手」でした。
3. 売り込みすぎない
「顧客が欲しい商品だけを売る」ことを鉄則にしました。
無理なアップセルやおとり商法を排除し、信頼を損なわない営業を心がけたのです。
結果──最下位からの大逆転
こうした戦略の結果、
- 観客動員数は大幅に増加
- 4シーズンでリーグ最下位から12位へ
- 球団の売却価格は 5,200万ドル → 9200万ドル に上昇
チームの成績自体は弱いままでしたが、マーケティングによって「売れない商品」を「売れる商品」へと変えたのです。
ここから学べること
本書のエッセンスを一言で表すなら、
「売りたい商品ではなく、顧客が欲しい商品を売れ」
ということです。
- 「誰を相手にするのか」を見極める
- 「今いる顧客」を大切にする
- 「誠実な営業」が長期的に効いてくる
これらはどんな業界にも通じる原則であり、読者は自分のビジネスにそのまま応用できるでしょう。
読んで良かった!個人的な感想
私はこの本を読みながら、営業やマーケティングに悩むときほど「シンプルに立ち返ることが大事だ」と感じました。
特に心に残ったのは、
- 「データに基づき、関心を持った人にだけ売る」
- 「無理に売り込まない」
という2点です。
どちらも当たり前のように思えますが、実際の現場では忘れがちです。
焦っているときほど派手な広告や新規開拓に走りたくなるもの。
でも本当に効果があるのは、 既存の顧客を大事にすること なんですよね。
マーケティングに悩んでいる人にとって、この本は「一度立ち止まって考え直す」きっかけになると思います。
まとめ
『エスキモーに氷を売る 新版』は、ただのマーケティング理論書ではなく、実際の現場での成功事例をベースにしたストーリーブックです。
- 「売れない商品をどう売るか?」という永遠の課題に答えてくれる
- NBA弱小チームの実話なので臨場感がある
- 営業・マーケティング初心者にもわかりやすい
という理由で、ビジネスに関わるすべての人におすすめできます。
もし「自社の商品がなかなか売れない」と悩んでいるなら、きっとヒントが見つかるはずです。
