本当に解くべき問題は何か?──『イシューからはじめよ[改訂版]』が示す知的生産の核心
なぜ「イシューからはじめる」のか?
日々の仕事の中で、私たちは「課題」や「問題解決」に追われています。
しかし、その多くは実は「解かなくてもよい問題」かもしれません。
安宅和人著『イシューからはじめよ[改訂版]』は、知的生産において最も重要なのは「どの問題を解くか」を見極めることだと説きます。
つまり、「イシューからはじめる」ことこそが、生産性を圧倒的に高める第一歩 なのです。
本書のエッセンス
1. 「なんちゃってイシュー」に惑わされるな
世の中で「問題」とされていることの大半は、今すぐ答えを出す必要がないものです。
著者は「解くべき問題は100個のうち、せいぜい2〜3個にすぎない」と言います。
例えばブランドが低迷しているとき、「新ブランドにリニューアルすべきか」という問いよりも、まず「市場自体が縮小しているのか」「競合に負けているのか」を見極めることが先決です。
本当に取り組むべき課題かどうかを見極める視点がなければ、努力は空回りしてしまうのです。
2. 仮説を立て、イシューを明確にする
ただ問題を整理するだけでは不十分です。
強引にでも仮説を立ててみることで、単なる問いが「答えを出すべきイシュー」に変わります。
- 「市場規模はどうか?」ではなく、
- 「市場規模は縮小に入りつつあるのではないか?」
こうしたスタンスを取ることで、必要な情報や分析も見えてきます。
3. 一次情報と「考える材料」を集める
良いイシューを見つけるには、現場に足を運び「一次情報」に触れることが不可欠です。
加工済みのレポートや二次情報だけでは見えてこないものがあります。
そのうえで、業界構造や競争関係などの「基本的な地図」をざっくりとスキャンし、過剰に調べすぎないこと。
情報を集めすぎると、自分なりの視点や発見が失われてしまうからです。
4. イシューを分解し、ストーリーを描く
大きなイシューはそのままでは答えが出ません。
「サブイシュー」に分解し、仮説を立て、検証可能な単位に砕いていきます。
そのうえで「ストーリーライン」を組み立てます。
- WHY型(理由を並べ立てる)
- 空・雨・傘型(観察→分析→結論)
といった型を使いながら、伝えるべきメッセージを明確に設計するのです。
5. 絵コンテを描き、分析に移す
ストーリーラインに沿って、最終的にどのようなデータやグラフが必要かを「絵コンテ」として描き出します。
重要なのは「どんな結果がほしいのか」から逆算して考えること。
いきなりデータ集めや分析に飛び込まず、最も価値のあるサブイシューから粗く検証する──これが効率的な問題解決のプロセスです。
6. メッセージドリブンで伝える
最後に必要なのは「力強いメッセージ」。
イシューに基づき、あいまいさを排除した明快な結論を提示することで、受け手に納得感と共感を生み出せます。
同じ分析でも、「イシューからはじめる」ことでアウトプットの質は劇的に高まります。
読んでみて感じたこと
本書を読んで印象的だったのは、「努力する前に考える」ことの大切さ です。
一生懸命にデータを集めても、間違ったイシューに取り組んでいれば無駄に終わります。
逆に、正しいイシューを見極められれば、限られた時間でも成果を出せる。
これは研究やビジネスだけでなく、日常の意思決定にも応用できる考え方だと感じました。
まとめ
『イシューからはじめよ[改訂版]』は、論理的思考やフレームワークを超えて、知的生産の本質に迫る一冊 です。
- 本当に解くべき問題を見極める
- 仮説を立てて具体化する
- ストーリーとメッセージでまとめる
これらのアプローチは、ビジネスパーソンはもちろん、学生や研究者にとっても大きなヒントになります。
忙しく働いているのに成果が出ないと感じている人、無駄な分析や資料作りに疲れている人にこそおすすめしたい本です。
