社会に貢献する形で問題を解決する力｜アドラー心理学が示す教育の本質

子どもの問題行動を前に、親や教師は「なぜこんな行動をとるのか」「どうすれば改善できるのか」と悩むことが少なくありません。
心理学者アルフレッド・アドラーは著書『教育困難な子どもたち』の中で、この問いに対して重要な視点を示しました。

それは次の二つの問いかけです。

1. 問題行動は「いつから」始まったのか
2. 子どもが「人目を引こうとするとき」はどんな状況か

この二つを見極めることが、子どもの行動を理解する手がかりになります。

問題行動は「サイン」である

アドラー心理学では、問題行動は単なる「悪いこと」ではなく、その子なりの目的やサインと考えます。

• 叱られることででも親や教師の注目を得たい
• 自分の居場所を確認したい
• 力を誇示して支配しようとする
• あきらめや回避によって責任を免れようとする

こうした行動の背景には、子どもが「自分はこの共同体にどう関わればよいのか」と模索する気持ちがあります。

社会に貢献する形での解決

アドラーは、人は困難に直面したときに「社会に貢献する形で解決する能力」が必要だと述べています。

例えば――

• 勉強が苦手でも、仲間と協力してプロジェクトを成功させる
• スポーツで勝てなくても、チームのために声をかけ続ける
• 家庭内で問題が起きても、家族全員が安心できるように工夫する

これは単なる「問題解決能力」ではなく、社会的に有益で建設的な解決方法を探す力です。

子どもの問題行動をどう支えるか

親や教師は、問題行動そのものを責めるのではなく、「その子が社会にどう貢献できるか」に視点を変えることが求められます。

1. 背景を理解する
   「いつから」「どんなときに」問題行動が出るのかを観察する。
2. 注目の仕方を変える
   問題行動ではなく、社会に役立つ行動をしたときに注目し、評価する。
3. 協力を体験させる
   チーム活動や家庭での役割を通じて、貢献感覚を育てる。
4. 小さな成功を積み重ねる
   「自分にもできる」と思える経験を与え、社会への参加意欲を高める。

大人自身に求められる力

実は「社会に貢献する形で解決する能力」は、大人にも必要です。
職場でのトラブルや家庭での衝突を「誰かを責める」ことで処理するのではなく、「どうすれば全員にとって良い形で解決できるか」と考える。

この姿勢を大人が実践することで、子どももまた自然と学び取っていきます。

まとめ

子どもの問題行動を理解するためには、**「いつから」「どんな状況で」**という視点が大切です。
そのうえで、教育の本質は「社会に貢献する形で困難を解決する能力」を育てることにあります。

子どもも大人も、この力を磨いていくことで、困難は単なる障害ではなく、共同体を強めるきっかけとなります。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。