子どもに「自分への信頼」を育てるには|アドラー心理学が示す自己信頼の大切さ
「ためらい、足を止め、自信なさげに周囲をうかがう子ども」――教育現場や家庭で、こうした姿に心を痛めた経験はないでしょうか。
心理学者アルフレッド・アドラーは、このような子どもたちは「自分に対する適切な信頼をもっていない」と指摘しています。
自分への信頼とは何か
ここでいう「自分への信頼」とは、単なる自己肯定感とは少し異なります。
それは「自分ならなんとかできる」「挑戦しても大丈夫」という感覚です。
- 自分に価値があると感じているか
- 劣等感にとらわれていないか
- 状況に応じて工夫できると思えているか
こうした自己認識の積み重ねが「自己信頼」を形づくります。
自信を持てない子どもの特徴
自分に信頼を持てない子どもは、次のような行動を見せることが多いです。
- 周囲を気にして行動できない
- 失敗を恐れて挑戦しない
- 指示がないと動けない
- 劣等感から「どうせ自分なんて」と考える
こうした姿の背景には、過去の経験から「自分はできない」「失敗すると責められる」という思い込みが形成されていることが多いのです。
ライフスタイルの発達を理解する
アドラー心理学では、人は幼少期の経験を通じて「ライフスタイル(物事の受け取り方や行動パターン)」を形成すると考えます。
子どもが自分に信頼を持てないとき、その背景を理解するには次の視点が役立ちます。
- どんな場面で自信があるか/ないか
→ 勉強は自信がないが、スポーツなら自信がある、など。 - 現在と過去を比較する
→ 昔より挑戦できるようになっているのか、逆に臆病になっているのか。 - 周囲からの評価をどう受け止めているか
→ 褒められても信じられないのか、それとも安心につながっているのか。
こうした「線」を追うことで、その子のライフスタイルがどう発達してきたのかを理解できます。
自己信頼を育てるためにできること
親や教師にできるのは、子どもが「自分でもできる」と思える経験を積ませることです。
- 小さな成功体験を重ねる
できる範囲の課題を与え、達成したら認める。これが「自分にも力がある」という感覚を育てます。 - 失敗を責めず、学びの機会にする
「なぜできなかったのか」「次はどうすればいいか」と一緒に考える。失敗を恐れる気持ちを和らげます。 - 比較ではなく成長を評価する
他人との優劣ではなく「昨日の自分」との違いに注目し、進歩を認める。 - 勇気づけの言葉をかける
「やってみたんだね」「工夫したのはいいね」と努力そのものを評価する。
大人自身の「自己信頼」も問われる
子どもに自己信頼を育てたいなら、大人自身も「自分を信頼する姿勢」を持つ必要があります。
親や教師が失敗を恐れず挑戦している姿を見せることで、子どもは自然に「挑戦してもいいんだ」と学んでいきます。
まとめ
アドラー心理学によれば、自分に対する適切な信頼を持てない子どもは、ためらい、臆病になりやすい傾向があります。
それを理解するためには、その子の過去から現在に至るライフスタイルの発達を見ていくことが重要です。
そして、子どもの自己信頼を育てるには、失敗を責めず、小さな成功を積み重ね、勇気づけを続けること。
その積み重ねが「自分なら大丈夫」という感覚を育て、未来への挑戦につながっていきます。
