持って生まれたものより「どう生かすか」が大切|アドラー心理学の視点
「うちの子は才能があるのか」「自分には生まれつきの能力が足りないのではないか」――子育てや自己成長を考えるとき、どうしても「持って生まれたもの」に注目してしまうことがあります。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、著書『生きるために大切なこと』の中でこう述べています。
もって生まれたものに、それほど大きな意味はない。
重要なのは、それを子ども時代にどう生かすかである。
つまり、遺伝や才能そのものよりも、「それをどう活用するか」「どのような方向に使うか」がはるかに大切なのです。
遺伝や才能に縛られすぎない
私たちはつい、遺伝や生まれつきの能力に大きな意味を持たせてしまいます。
- 「運動神経がいい子だから将来はスポーツ選手に」
- 「算数が苦手だから理系には向いていない」
- 「性格が内向的だからリーダーにはなれない」
こうした考え方は、子どもや自分の可能性を狭めてしまう危険性があります。
アドラー心理学では、能力そのものよりも、それをどう生かすかが未来を決めると考えます。
「生かし方」が人生を変える
持って生まれたものは確かに出発点になりますが、それをどう使うかは本人の選択次第です。
- 体力がある子 → 仲間を助けるリーダーにも、いじめっ子にもなり得る
- 頭の回転が速い子 → 問題を解決する存在にも、ズル賢さに使うこともできる
- 感受性が強い子 → 人を理解する優しさにも、不安の強さにもなる
同じ能力でも「生かし方」が違えば、まったく異なる人生になります。
子ども時代の経験がカギ
アドラーは「もって生まれたものをどう生かすかは、子ども時代の経験で形づくられる」と考えました。
- 成功体験を積み重ねた子どもは、自分の資質を前向きに生かそうとする
- 失敗を責められ続けた子どもは、その資質を回避や攻撃に使ってしまう
だからこそ、親や教育者の関わり方が大きな意味を持つのです。
親や教育者にできること
では、子どもが「持って生まれたものを前向きに生かす」ようになるために、大人はどうサポートすればいいのでしょうか。
- 比較ではなく成長を見る
他の子と比べるのではなく、本人の「昨日と今日の違い」を認める。 - 努力や工夫を評価する
結果ではなく、取り組みの姿勢を褒めることで「資質を活用する力」が育つ。 - 失敗を肯定的に扱う
「このやり方は合わなかったね。次はどうする?」と建設的に考えさせる。 - 貢献の場を与える
家庭や学校で役割を持たせ、「自分の力が役立つ」という体験を積ませる。
大人自身にも当てはまる
この考え方は子どもだけでなく、大人にも大切です。
私たちも「自分には才能がない」と落ち込むことがありますが、実際に問われているのは「何を持っているか」ではなく「それをどう生かすか」です。
- コミュニケーションが得意なら、職場で調整役を担える
- 好奇心が強ければ、新しい分野に挑戦できる
- 不器用さも工夫力や忍耐力に変えられる
「生まれつきの限界」ではなく「生かし方の工夫」が未来を決めるのです。
まとめ
アドラー心理学の視点では、「もって生まれたもの」そのものに大きな意味はありません。
大切なのは、それを子ども時代にどう生かし、どの方向に使うかということです。
親や教育者ができるのは、子どもに「自分の力を前向きに使える」経験を与えること。
そして大人自身も「生かし方次第で人生は変えられる」と信じて行動することです。
