安易な道を選ばず、困難に立ち向かう勇気を育てる|アドラー心理学の教育視点
人生には必ず困難があります。勉強、仕事、人間関係、進路――どんな場面でも「楽な道」と「困難な道」の選択を迫られることがあります。
子どもたちが「安易な道」を選びがちなのは、ある意味で自然なことです。なぜなら、その道では勇気を持たずとも「自分には力がある」と錯覚できるからです。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは著書『教育困難な子どもたち』の中で、こうした傾向に警鐘を鳴らしています。
教育困難な子どもは、問題に立ち向かう勇気を持てない。
建設的な努力によって自分の居場所を確保する勇気が欠けている。
つまり、安易な道を選び続けることは、子どもの成長を妨げてしまうのです。
なぜ安易な道を選んでしまうのか
子どもが困難ではなく安易な道を選ぶのには、いくつかの心理的背景があります。
- 失敗への恐れ:「挑戦して失敗するくらいなら、最初から楽なほうを選ぼう」
- 注目されたい欲求:安易な方法でも「自分はできる」と見せたい
- 劣等感の回避:困難に挑むと自分の弱さが露呈してしまう
このように、安易な道の背景には「勇気の欠如」と「自己信頼の不足」が隠れています。
教育で大切なのは「勇気を育てること」
アドラー心理学の教育観は明快です。
子どもが安易な道に逃げず、困難に立ち向かえるようにするには「勇気づけ」が欠かせません。
- 「やってみよう」「君ならできる」と挑戦を後押しする
- 失敗を責めず「次はどうすればいい?」と課題化する
- 小さな成功を認め、自信を積み重ねさせる
こうした関わりが、子どもに「困難を克服できる力がある」と信じさせ、勇気を育てます。
安易な道に逃げた子どもへの対応
もし子どもがすでに安易な道を選んでしまっていたとしても、手遅れではありません。
- 批判ではなく理解から始める
「なぜその道を選んだのか」を聞き、その背景にある不安や恐れを理解する。 - 現実的な挑戦を提案する
いきなり大きな課題を押しつけず、小さな挑戦から始めさせる。 - 勇気をくじかない
失敗したときに「やっぱり無理だ」と言わない。失敗は次のステップに必要な学びだと伝える。
大人にも当てはまる「安易な道」
この考え方は大人にもそのまま当てはまります。
- 責任のある仕事を避ける
- 新しい挑戦を先延ばしにする
- 自分を守るために言い訳を重ねる
これらはすべて「安易な道」を選んでいる状態です。
しかし大人もまた、勇気を持って困難に立ち向かうことで、成長と自己信頼を取り戻せます。
まとめ
子どもは安易な道を選びがちですが、その背景には「勇気の不足」があります。
教育の本質は、子どもが困難に挑み、建設的な努力で居場所を築く勇気を育てることです。
大人自身もまた「安易な道ではなく、困難に立ち向かう選択をする」姿勢を見せることが、子どもの大きな学びにつながります。
勇気を持って困難に挑むこと――それが、子どもも大人も成長するための唯一の道なのです。
