勇気は本来自分の中にある|アドラー心理学に学ぶ共同体感覚とのつながり
「勇気が欲しい」「もっと強くなりたい」と思うとき、私たちはつい「誰かに励ましてもらわないと勇気は持てない」と考えてしまいます。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、勇気についてまったく異なる視点を提示しました。
著書『個人心理学の技術Ⅱ』でアドラーはこう述べています。
勇気は本来、自分の中にある。
それは、自分が社会の一員だと感じられるリズムである。
つまり、勇気は外から与えられるものではなく、すでに自分の中に眠っているのです。
勇気と共同体感覚のつながり
アドラー心理学の大きな柱のひとつに「共同体感覚」があります。
これは「他者としっかり結びついている」「自分は社会の一員だ」と感じる感覚のことです。
勇気は、この共同体感覚と密接に関わっています。
- 自分は孤立していない
- 誰かの役に立てる
- 社会の一部として価値がある
この感覚があると、人は自然と勇気を持てるようになります。
外から与えられる「勇気づけ」との違い
ここで注意したいのは、「勇気づけ」と「勇気そのもの」は違うということです。
- 勇気づけ:外からの支えによって、自分の中にある勇気を引き出す行為
- 勇気そのもの:もともと内側に存在し、共同体感覚とつながっている力
つまり、勇気づけとは「勇気を与えること」ではなく「すでにある勇気を目覚めさせること」なのです。
なぜ勇気を失ったように見えるのか
多くの人が「自分には勇気がない」と感じるのは、勇気が存在しないからではなく、勇気を引き出せていないからです。
- 劣等感にとらわれている
- 過去の失敗を恐れている
- 他者とのつながりを実感できない
こうしたとき、人は自分の中の勇気に気づけず、挑戦を避けてしまいます。
勇気を引き出す方法
勇気はもともと自分の中にある――それを引き出すには、次のような方法が役立ちます。
- 共同体感覚を実感する
家庭、学校、職場、地域で「役に立てた」と感じる体験を積む。 - 小さな挑戦を繰り返す
日常の小さな課題に取り組み、「できた」という感覚を重ねる。 - 勇気づけを受け入れる
周囲の人からの「あなたならできる」という言葉を素直に受け取り、自分の中の勇気を意識する。 - 他者を勇気づける
他人を励ますことで、「自分の中にも勇気がある」と再確認できる。
教育における「勇気の引き出し」
子どもにとっても同じです。
子どもは本来、誰もが勇気を持っています。
しかし叱責や比較によって勇気が眠ってしまうことがあります。
親や教師にできるのは――
- 子どもを信じて見守る
- 挑戦を肯定し、失敗を学びに変える
- 他者との協力を体験させる
こうして「勇気を思い出す環境」を整えることが大切です。
まとめ
アドラー心理学によれば、勇気は外から与えられるものではなく、本来自分の中にあるものです。
それは「社会の一員だと感じられるリズム」であり、共同体感覚と深くつながっています。
勇気づけとは、すでに存在する勇気を目覚めさせる働きです。
自分を信じ、他者とのつながりを感じながら一歩踏み出すとき、人は本来の勇気を思い出し、困難を克服する力を発揮できるのです。
