トラブルのときにライフスタイルが出る|アドラー心理学が教える人間理解の視点
日常生活で、ある人の意外な一面を見て驚いた経験はないでしょうか。
普段は穏やかなのに、トラブルになると急に怒鳴る人。
普段は冷静なのに、パニック時には柔らかく人を励ます人。
心理学者アルフレッド・アドラーは、こうした現象を「ライフスタイルが露わになる瞬間」として捉えました。
著書『生きるために大切なこと』にはこう記されています。
人のライフスタイルが露わになるのは、パニックやトラブルに直面したときだ。
そんな場面こそ、その人を理解できる最大のチャンスである。
ライフスタイルとは?
アドラー心理学でいう「ライフスタイル」とは、その人の ものの見方・考え方・行動のパターン のことです。
子ども時代の経験や環境との適応の中で形づくられ、大人になってからの対人関係や課題の解決方法に影響を与えます。
- 困難を「挑戦」と捉える人 → 前向きな行動を取る
- 困難を「脅威」と捉える人 → 回避や攻撃に走る
- 困難を「他者と協力すべきもの」と捉える人 → 助けを求めて協力する
つまり、ライフスタイルは「人が困難をどう解釈するか」によって表れるのです。
なぜトラブル時にライフスタイルが出るのか
平常時には、多くの人が「社会的に望ましい態度」を取っています。
しかし、トラブルやパニックのときには余裕がなくなり、表面的な装いが剥がれ落ちます。
その瞬間に出てくるのは――
- 根底にある信念
- 物事の受け止め方のクセ
- 自分や他者への信頼の度合い
つまり、ライフスタイルの「本質」がむき出しになるのです。
人を理解する最大のチャンス
アドラーは「トラブルこそ人を理解できる最大のチャンス」と述べています。
これは教育や人間関係にとって大きな示唆を含んでいます。
- 子ども:失敗や衝突の場面で、真の課題解決力や信念が見える
- 同僚や部下:仕事の危機的状況で、その人の責任感や協力姿勢が明らかになる
- 友人やパートナー:困難な状況で支え合えるかどうかが試される
つまり、普段の表面的な態度ではなく、困難時の行動を観察することで、人間理解が深まるのです。
自分を理解するためにも役立つ
この視点は、他人だけでなく自分自身を理解するのにも役立ちます。
- トラブル時に「逃げたくなる」 → 回避的ライフスタイル
- 「誰かを責めたくなる」 → 責任転嫁的ライフスタイル
- 「解決策を探そうとする」 → 建設的ライフスタイル
自分がどんな行動を選ぶかを観察すれば、自分のライフスタイルの特徴を知ることができます。
ライフスタイルを健全に変えていくために
大切なのは「ライフスタイルは変えられる」ということです。
- 勇気づけを受けることで「困難は乗り越えられる」と思えるようになる
- 共同体感覚を育むことで「一人ではない」と感じられる
- 小さな挑戦を積み重ねることで自分を信じられるようになる
こうした経験を通じて、人はトラブルに直面したときも、より健全で建設的なライフスタイルを発揮できるようになります。
まとめ
人のライフスタイルは、パニックやトラブルのときにこそ露わになります。
それは、その人の本質を理解する最大のチャンスです。
他人を理解するにも、自分を見直すにも、「困難時の行動」に注目することが大切です。
そして勇気づけや共同体感覚を育むことで、ライフスタイルはより前向きに変わっていきます。
困難は単なる試練ではなく、人間理解と成長の扉を開く大切なきっかけなのです。
