他者との関係から人はわかる|アドラー心理学に学ぶ共同体感覚とライフスタイル
人を理解しようとするとき、私たちは「性格診断」や「行動のパターン」に目を向けがちです。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、人間理解の本質はもっとシンプルなところにあると考えました。
著書『性格の心理学』でアドラーはこう述べています。
他者とどのように結びつき、どのように協力し合っているかを見れば、その人がわかる。
共同体感覚と、力や優越を求める努力の強さのバランスが人の違いを生み、それがライフスタイルとなって表れる。
他者との関係性が人を映し出す
アドラー心理学では、人間を「社会的存在」として捉えます。
つまり、その人の本質は「他者との関わり方」によって最もよく表れるということです。
- 人を信頼し、協力する人
- 他者を支配しようとする人
- 自分を守るために距離を取る人
このように、他者との結びつき方を見るだけで、その人の価値観やライフスタイルが浮かび上がってきます。
共同体感覚とは何か
アドラーが繰り返し強調した「共同体感覚」とは――
- 自分は社会の一員である
- 他者は仲間である
- 協力し合うことに価値がある
と感じられる感覚のことです。
共同体感覚が強い人ほど、他者を信頼し、社会に貢献しながら生きることができます。
優越欲求が強すぎるとどうなるか
一方で、人間には「力や優越を求める欲求」もあります。
これは自然な欲求ですが、過度になると共同体感覚に反する方向へ進んでしまいます。
- 常に他人より優れていたい
- 支配やマウンティングで自分を保つ
- 協力よりも競争を選ぶ
このような傾向が強いと、孤立や対立を生み、人間関係を壊してしまいます。
ライフスタイルは二つの要素のバランスで決まる
アドラー心理学では、人のライフスタイルは 共同体感覚の強さ と 優越欲求の強さ の二つのバランスで決まるとされています。
- 共同体感覚が強く、優越欲求が適度 → 協力的で前向きな人間関係を築く
- 共同体感覚が弱く、優越欲求が強い → 支配的、競争的になりやすい
- 両方が弱い → 消極的で引きこもる傾向になる
このバランスが「その人らしさ」として表れ、私たちが「性格」と呼んでいるのです。
教育や人間関係への応用
この視点は、子育てや教育、そして大人同士の人間関係にも役立ちます。
- 子どもを理解するとき:他者とどう関わっているかを観察する
- 職場での人間関係:優越欲求ではなく、共同体感覚を高める方向へ導く
- 自己理解:自分が他者とどう結びついているかを振り返る
人を「ラベル」で決めつけるのではなく、関係性の中で理解することが、より豊かな人間理解につながります。
まとめ
アドラー心理学は、人を理解するには「他者との関係性」を見ることが大切だと説きます。
共同体感覚の強さと、力や優越を求める努力のバランスが、その人のライフスタイルを形づくります。
人間理解とは、孤立した個人を見ることではなく、関係性の中にその人の姿を見つけること。
そして、自分自身も「他者とどう協力しているか」を振り返ることが、成長の第一歩なのです。
