発言や振る舞いの一部で判断しない|アドラー心理学が教えるライフスタイル理解の視点
「あの人は短気だ」「この子は怠け者だ」――私たちはつい、一部の行動や言葉をもとに人を決めつけてしまいがちです。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、そうした見方は危険だと指摘しました。
著書『人間知の心理学』の中で、彼はこう述べています。
発言や振る舞いの一端をもとにライフスタイルの全体像を判断してはいけない。
ライフスタイルを理解するには、その人の目標や生き方の方程式に注目することが大切である。
ライフスタイルとは全体的なもの
アドラー心理学における「ライフスタイル」とは、個々の行動や発言を超えた「その人全体の生き方のパターン」のことです。
- 目標に向かってどう努力するか
- 世界や人間関係をどう意味づけているか
- どんな方向性をもって生きているか
これらを含めてこそ、ライフスタイルを理解できるのです。
一部だけで判断すると何が起きるか
一部の言動だけを切り取って判断すると、誤解やすれ違いが生まれます。
- 子どもが宿題をしない → 「怠けている」と決めつける
- 部下が発言しない → 「やる気がない」と思い込む
- パートナーが怒った → 「短気な人だ」と断定する
しかし、その背後には「失敗したくない」「批判されるのが怖い」「理解してほしい」といった目標や思いが隠されている場合があります。
つまり、見えている行動は「氷山の一角」にすぎないのです。
目標を手がかりに全体像を理解する
アドラー心理学では、人の行動や発言を理解するには、その背後にある「目標」に注目することが重要だと考えます。
- 認められたい
- 安心したい
- 自分の存在価値を確認したい
- 他者より優位に立ちたい
こうした目標を理解することで、個々の行動が「なぜその人にとって必要なのか」が見えてきます。
子どものライフスタイルを理解するために
特に子どもを理解するには、この視点が欠かせません。
たとえば――
- 授業中にふざける子 → 「注目されたい」という目標が隠れている
- 宿題を拒む子 → 「できない自分を見せたくない」という目標がある
- 友達に乱暴する子 → 「支配して優越を得たい」という目標を持っている
子どもの言動をそのまま「問題行動」とラベルづけするのではなく、「どんな目標が隠れているのか」を探ることが理解への第一歩です。
大人にも当てはまる
この考え方は大人の人間関係にもそのまま当てはまります。
- 会議で強く主張する人 → 「認められたい」「責任感を示したい」
- すぐに意見を変える人 → 「衝突を避けたい」
- ネガティブな発言が多い人 → 「自分を守りたい」
こうした目標に気づけば、相手を単純に「強引だ」「弱い」と切り捨てるのではなく、より深く理解できるようになります。
まとめ
人を理解するには、発言や行動の一部ではなく「ライフスタイル全体」を見ることが大切です。
そのための手がかりは「目標」と「考え方のパターン」にあります。
子どもも大人も、行動の背後には「自分なりの目的」が隠れています。
それに気づき、全体像を理解することで、人間関係はより深まり、相互理解が進みます。
表面的な行動で判断せず、「なぜそうするのか」を見抜く――これこそがアドラー心理学が教える人間理解の鍵なのです。
