アドラー心理学が目指すもの ― 個人と社会をつなぐ“適応”の心理学
アドラー心理学(個人心理学)は、「社会への適応」を目的としています。
一見すると、「個人心理学」という名前から「社会」とは切り離された個人の心を扱う学問だと誤解されがちです。しかし、アドラー心理学における「個人」とは、社会から独立した存在ではなく、むしろ社会の中でのみ成り立つ存在です。
個人と社会は切り離せない
私たちは社会から切り離されて存在することはできません。
言葉や文化を学び、人と関わる中で「自分とは誰か」を知り、個人としての意識を持つようになります。
つまり、個人が個人であるためには、必ず社会が必要です。
社会の中にいるからこそ、私たちは自分の性格やライフスタイルを形づくることができるのです。
他の心理学との違い
多くの心理学では「個人」と「社会」を区別して考える傾向があります。個人は個人、社会は社会というように、分析の対象を分けてしまうのです。
しかし、アドラー心理学は異なります。個人を理解するためには、その人が社会にどう関わり、どう適応しようとしているのかを切り離さずに見る必要があると考えるのです。
ライフスタイルと社会適応
アドラー心理学では「ライフスタイル」という概念を用います。ライフスタイルとは、その人の性格や考え方、行動のパターンを意味します。
ライフスタイルは個人の内側だけでなく、社会との関わりの中で形づくられます。たとえば、子ども時代の家庭環境や友人関係、学校や地域社会などとの関わりによって、その人がどんなライフスタイルを選ぶかが影響されます。
そのため、アドラー心理学は「個人のライフスタイルを理解すること」と「社会への適応を考えること」を同時に追求する学問なのです。
社会への適応の意味
では、「社会に適応する」とはどういうことでしょうか。
それは「社会に従属すること」や「同調すること」ではありません。
アドラーが説く社会適応とは、自分の存在を社会の中で活かし、他者と協力し合いながら生きることです。孤立せず、他者を敵とみなさず、共同体の一員として自分を活かす。それがアドラー心理学の目指す「適応」です。
まとめ
アドラー心理学(個人心理学)は、名前とは裏腹に「社会」と切り離せない学問です。
個人の心を理解することは、社会とのつながりを理解することでもあります。人は社会の中でしか個人になれず、社会に適応することで初めて、自分らしさを発揮できるのです。
「個人を知ることは、社会を知ること」――これこそがアドラー心理学の核心だといえるでしょう。
