劣等感が強すぎるとどうなる?──アドラー心理学で読み解く「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」
劣等感は誰にでもある自然なエネルギー
アドラー心理学では、「劣等感」そのものは決して悪いものではありません。
それは、「今より成長したい」「理想に近づきたい」という健全な向上心のもとにある感情です。
しかし、問題なのはその劣等感が極端に強くなりすぎたとき。
そのとき、私たちの中で“心のバランス”が崩れ始めます。
アドラーは、この「極端に強い状態」を“コンプレックス”と呼びました。
「コンプレックス」とは、“強すぎる状態”のこと
一般的に「コンプレックス」という言葉には、“劣等感のかたまり”というイメージがあります。
けれどアドラーが使った「コンプレックス」という言葉には、
「極端に強まった心理状態」という意味しかありません。
つまり、
- 劣等感が強くなりすぎると「劣等コンプレックス」になり、
- 向上心や優越の欲求が強すぎると「優越コンプレックス」になる。
どちらも、心が過剰に片方へ傾いた状態なのです。
劣等コンプレックスとは?
劣等コンプレックスとは、
「自分は他の人より劣っている」「どうせうまくいかない」という気持ちが強まりすぎ、
行動する前から諦めてしまう状態です。
この状態では、
- 何をやっても自信が持てない
- 他人の成功が怖くなる
- 「努力しても無駄」と思ってしまう
といった感覚が支配します。
本来の劣等感がもつ「成長へのエネルギー」が、
「自分にはできない」という無力感にすり替わってしまっているのです。
優越コンプレックスとは?
一方、優越コンプレックスとは、
「自分は他人より優れている」「特別でなければならない」という思いが強まりすぎた状態です。
この背景には、実は強い劣等感の裏返しがあります。
心の奥では「自分に自信がない」と感じているため、
それを打ち消すように“優れている自分”を演じようとするのです。
たとえば、
- 人を見下したり、批判したりする
- 成功を誇示して安心を得ようとする
- 常に「勝っていないと不安になる」
こうした行動は、無意識に「劣等感を隠そう」としているサインでもあります。
劣等コンプレックスと優越コンプレックスは、同じ根から生まれる
一見、劣等と優越は正反対に見えます。
しかし、アドラー心理学の立場では、どちらも同じ“劣等感”から生まれているのです。
「劣っている自分を受け入れられない」
──この感情が強くなると、
ある人は自信を失って“劣等コンプレックス”に、
またある人はそれを打ち消そうとして“優越コンプレックス”に向かいます。
つまり、劣等と優越は“表裏一体”。
その両方を抱えていることも、実は珍しくありません。
健康的な向上心を保つための3つのヒント
- 「劣等感=悪いもの」という思い込みを手放す
劣等感は、あなたが「もっと良くなりたい」と思える健康な心の動きです。
否定せず、素直に受け入れることが第一歩です。 - 他人との比較ではなく、自分の目標に意識を向ける
他人を基準にすると、劣等も優越も強まりやすくなります。
“理想の自分”という内側の基準に立ち戻りましょう。 - 「できたこと」に焦点を当てる
日々の小さな進歩を意識的に認めることで、劣等感が健全な向上心に変わります。
まとめ:劣等感を“敵”にせず、“味方”にする
アドラー心理学が教えるのは、
劣等感そのものをなくすことではなく、それを上手に使うことです。
劣等感が強すぎると、心はバランスを失い、コンプレックスへと傾いてしまいます。
けれど、適度な劣等感は人生を前へと押し出すエネルギーになります。
劣等でも優越でもなく、
「成長したい」「他人にも貢献したい」と思える健全な向上心を育てる。
それこそが、アドラー心理学の目指す“本当の強さ”なのです。
