「目が悪くても画家になれる」──アドラー心理学が教える“弱さを力に変える”生き方

「弱さ」は創造力の源になる

アドラー心理学では、人間の“弱さ”や“欠け”は決してマイナスではなく、
成長と創造の出発点と考えられています。

アドラーの言葉を借りれば、

人間は、不足を補おうとする努力の中で発達する。

これは身体的な側面にも、精神的な側面にもあてはまります。
目が悪い、体が不自由、学習に時間がかかる──
そうした弱さを持つ人ほど、「どうすればできるか」を探す工夫と想像力が育つのです。

「目が悪い子どもは画家になる」──弱さが感性を磨く

アドラーは、目が悪い子どもたちが「見ること」への関心を強めると述べています。

視力が弱いからこそ、

• 色のわずかな違いに敏感になる
• 光や影の変化を丁寧に感じ取る
• 遠近や形を頭の中で補いながら想像する

こうした観察力や感性が鍛えられ、結果として芸術的な感覚を発達させるのです。

実際に、多くの偉大な画家や芸術家の中には、
視力や色覚に制限を持っていた人も少なくありません。
しかし彼らは「見えないこと」を嘆く代わりに、
「感じ取る力」を極限まで高めて表現しました。

「障害」は創造のエネルギーに変えられる

人は、困難を前にしたとき、
「なぜ自分だけこんな目に」と思うことがあります。

けれどアドラー心理学の立場では、
その困難こそが人間を創造的にするチャンスだと考えます。

なぜなら、困難を抱えた人ほど、
それを乗り越えるために想像力・工夫・持続力を働かせるからです。

アドラーはこう述べています。

障害が人間に困難を強いるとき、想像力がその困難を超えようと働き始める。

つまり、障害や弱点は人を“消耗”させるのではなく、
挑戦と成長の方向へ駆り立てる力になるのです。

「欠け」を受け入れたとき、才能が目覚める

私たちは「弱点をなくすこと」を目標にしがちです。
しかし、アドラー心理学は“弱点を生かす”という考え方を提示します。

たとえば、

• 話すのが苦手な人が、観察力や表現力を伸ばす
• 集団が苦手な人が、深い思考や創造性を育てる
• 視覚的に制限がある人が、感覚や構成力を磨く

こうした例に共通しているのは、
「足りないもの」を埋めようとする人間の創造的な適応力です。

欠けを受け入れた瞬間、そこから新しい才能が生まれるのです。

教育における“弱さ”の見方を変える

子どもの教育や発達を考えるとき、
「できないこと」に注目するよりも、
「できないからこそ伸びる可能性」に目を向けることが大切です。

• 集中できない子は、感覚の幅が広い
• 動きが遅い子は、丁寧に物事を観察する
• 感情が豊かな子は、他人の気持ちを感じ取る力が強い

アドラー心理学は、そうした弱さの裏にある強さを見抜こうとする教育哲学でもあります。

まとめ：「弱さ」は“可能性”のもう一つの名前

アドラー心理学が教えるのは、

人間の弱さは、成長と創造の原動力である。

「目が悪くても画家になれる」という言葉は、
単に芸術的な話ではなく、すべての人に通じる生き方の比喩です。

私たちは、足りないものを嘆くのではなく、
そこから何を育て、どう生かすかを考えることで、
本当の意味での「強さ」を手に入れることができます。

弱さを受け入れた人こそ、最も豊かに生きられるのです。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。