「共同体感覚が欠ける」と人生はどうなる?|アドラー心理学が教える“つながり”の大切さ
共同体感覚が欠けると、人生は迷い始める
アドラー心理学の核心にある「共同体感覚(Community Feeling)」とは、
「自分は社会の一員であり、他者と共に生き、貢献できる存在である」
という感覚のことです。
この感覚がしっかりと育っている人は、困難に直面しても前向きに立ち向かい、人とのつながりの中で生きがいを見出します。
しかし、アドラーはこうも警告しています。
「共同体感覚が欠けていることは、人生を非建設的な方向へと向かわせてしまう。」
つまり、人が孤立し、他者への関心を失うとき、人生は次第に“迷走”し始めるのです。
共同体感覚を失ったときに起こること
共同体感覚を失った人は、「他者と共に生きる」感覚を持てなくなります。
その結果、次のような心理的・社会的な問題が現れやすくなります。
1. 孤立感と不安の増大
他人を信頼できず、「自分は一人だ」と感じるようになります。
この孤独感が不安や恐れを生み、心のバランスを崩してしまうのです。
2. 自己中心的な行動
他者とのつながりを感じられないため、行動の基準が「自分の利益」や「他人との比較」になりがちです。
その結果、他人とのトラブルや衝突が増えてしまいます。
3. 生きる意味の喪失
社会との関係を断ち切ると、「自分は何のために生きているのか」がわからなくなります。
人生の目的を見失い、虚無感や無気力に陥るケースも多く見られます。
アドラーが示した“共同体感覚の欠如”の典型例
アドラーは、共同体感覚が欠けた状態を具体的な事例としてこう説明しています。
「問題行動のある子ども、犯罪者、精神疾患の患者、アルコール依存症の人々──
彼らは、共同体感覚の欠如によって人生を非建設的な方向へ進めてしまっている。」
これらの人々に共通するのは、「他者への関心の欠如」です。
つまり、社会や仲間とのつながりを失い、自分の内側だけで苦しんでいる状態なのです。
“人生を損なう”ということの本当の意味
ここでアドラーが言う「人生を損なう」とは、単に“失敗する”という意味ではありません。
それは、**「成長や幸福につながる方向を見失ってしまう」**ということです。
人は孤立すると、他者を信じられず、自分を責めるか他人を攻撃するかのどちらかに偏りやすくなります。
この状態こそが、アドラーが言う「非建設的な人生」です。
反対に、他者との関係を取り戻し、協力や感謝の気持ちを再び持てるようになったとき、人生は再び建設的な方向へと動き出します。
共同体感覚を取り戻すための3つのステップ
アドラー心理学では、共同体感覚は「育て直すことができる」とされています。
以下の3つのステップが、その実践のヒントになります。
1. 他者に関心を向ける練習をする
「自分がどう思われるか」ではなく、「相手がどう感じているか」を意識することから始めましょう。
挨拶をする、感謝を伝える、小さな手助けをする――こうした行動が“他者への関心”を取り戻す第一歩です。
2. 「誰かの役に立てた」経験を増やす
共同体感覚は、貢献の実感から育ちます。
仕事でも家庭でも、「誰かの助けになれた」と思える体験を積み重ねることで、心の安定と充足感が生まれます。
3. 「協力する」姿勢を意識する
人は協力を通して信頼を築きます。
たとえ小さな場面でも、相手の立場を尊重し、共に考え、行動すること。
この積み重ねが、失われた共同体感覚を回復させる最大の鍵です。
他者に関心を持つことが「人生を立て直す力」になる
アドラーは、問題を抱える人々に対してこう言いました。
「私たちができることは、彼らが人生の建設的な面へ戻るよう働きかけ、他者に関心を持つように促すことだ。」
つまり、どんなに人生が行き詰まっていても、他者への関心を取り戻せば、再び前向きな道を歩むことができるということです。
他人と関わることを恐れず、信頼を少しずつ取り戻す。
その過程で人は、自分の存在価値を再発見していくのです。
まとめ:つながりを失うことが、人生を損なう
- 共同体感覚が欠けると、孤立・不安・虚無感が強まる
- 他者への関心を失うと、人生は非建設的な方向へ向かう
- 問題行動や依存、精神的な不調の背景にも“つながりの欠如”がある
- 共同体感覚は、他者への関心・貢献・協力によって回復できる
- 「つながる努力」が、人生を再び建設的に導く力になる
アドラー心理学が教えてくれるのは、人は他者とのつながりの中でしか幸福になれないという普遍的な真理です。
孤立を恐れず、もう一度“他者への関心”を取り戻してみましょう。
その一歩が、あなた自身の人生を再び建設的で豊かなものへと導いてくれるはずです。
