「共同体感覚」は人を導く星である｜アドラー心理学が語る“理想”の持つ力

「共同体感覚」とは、人生を照らす“理想の星”

アドラー心理学における「共同体感覚（Community Feeling）」とは、

「自分は社会の一員であり、他者と協力しながら生きている」という感覚。

この感覚は、人間の幸福や成長を支える基盤とされています。
しかし、アドラーはこうも言っています。

「共同体とは到達できない理想であり、共同体感覚もまた理想である。
それでも共同体感覚は、人間にとって“導きの星”なのだ。」

つまり、完全に「共同体感覚を極める」ことは不可能でも、その理想を目指すこと自体に意味があるというのです。

到達できない理想が、私たちを動かす

「理想」と聞くと、現実離れした夢のように感じるかもしれません。
しかし、アドラーにとって理想とは、“到達するための目標”ではなく、人生の方向を示す指針です。

たとえば、北極星のようなもの。
どんなに歩いても北極星そのものには届きませんが、「北の方角」を知るための目印にはなります。

同じように、**「他者と共に生き、社会に貢献する」**という理想の星があるからこそ、私たちは迷わずに人生を進むことができる。
アドラーが言う「共同体感覚の理想」とは、まさにその“導きの星”なのです。

完璧である必要はない

アドラーは、人間がどれほど成熟しても、決して過ちから完全に解放されることはないと指摘しています。

「たとえ多くの人から認められる立場にあっても、人間は過ちを犯す可能性がある。」

これは、どんなに立派な人物でも、誰もが不完全であるという前提を示しています。
だからこそ、他者を責めたり、自分の欠点を過度に責める必要はありません。

むしろ大切なのは、「不完全な自分が、それでも理想に向かって努力し続けること」。
アドラー心理学の根底には、この“未完成であることを恐れない勇気”があります。

理想があるから、努力が生まれる

もし人生に理想がなければ、人は何のために努力するのか分からなくなります。
理想は、結果ではなく“方向”を与えるもの。
アドラーはこのことを、「共同体感覚という星があるからこそ、人は進んでいける」と表現しました。

たとえば、

• 「家族をもっと思いやれる人になりたい」
• 「職場で他者と協力できる関係を築きたい」
• 「社会の中で役に立てる生き方をしたい」

こうした目標はすべて、共同体感覚の理想を具体的にしたものです。
完璧に実現することはなくても、その理想を意識して行動すること自体が、人生を前向きに変える力になるのです。

理想を見失ったときに起こること

反対に、理想を見失うと、人は自分中心の生き方に陥りやすくなります。

• 「どうせ自分だけが損をしている」
• 「他人なんて信じられない」
• 「生きる意味が分からない」

こうした思考は、共同体感覚を失った状態を表しています。
アドラーは、このような心理状態を「人生の課題から逃げている状態」と呼びました。

つまり、理想を失うと、人生の方向を見失うのです。

「導きの星」としての共同体感覚を育てる3つのヒント

1. 「誰かの役に立つ行動」を日常に取り入れる

理想は行動によって形になります。
小さなことで構いません。誰かに感謝を伝える、困っている人を手伝う──そんな日常の行動が「共同体感覚の星」を輝かせます。

2. 「完璧を目指さない」姿勢を持つ

理想は目標であって“義務”ではありません。
今日できる範囲で努力し、昨日より少しだけ前に進むこと。
それこそが、理想に向かうアドラー的な生き方です。

3. 「人と比べず、自分の理想」を意識する

他人の生き方を基準にすると、理想はただのプレッシャーになります。
大切なのは、“自分にとっての共同体感覚”をどう育てたいかという視点です。
理想とは、他者との比較ではなく、自分自身の内側から生まれる指針なのです。

理想がある限り、人は成長し続ける

アドラー心理学は、人間を「未完成の存在」として捉えています。
だからこそ、私たちは理想を持ち、努力を続けることができる。

「理想という星があるからこそ、人はその目標へ向かっていくことができる。」

この言葉は、挫折や失敗を経験するすべての人への励ましでもあります。
理想を見失わない限り、人生は何度でもやり直すことができるのです。

まとめ：共同体感覚という星を見上げよう

• 共同体感覚は、到達できないが“人生を導く理想”である
• 人間は不完全でも、理想を目指す努力の中で成長する
• 理想があるからこそ、迷いながらも前へ進める
• 他者とのつながりを意識することが、人生の方向を照らす
• 「理想の星」を見上げる姿勢が、心を豊かにする

アドラー心理学は、完璧を求める学問ではありません。
それは、**理想を持ちながら不完全な自分を受け入れる“勇気の心理学”**です。

たとえ理想に届かなくても、その星を見失わない限り、私たちはいつでも前に進めます。
今日という日も、あなたの心の空にある“導きの星”を見上げてみましょう。

TAKA

理学療法士/ビール

YouTubeContact

理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。