「運命を信じるな。運命を切り拓け」|アドラー心理学が教える“逃げない生き方”とは
「運命」という言葉に逃げていないか
私たちは、人生で思い通りにならない出来事に出会うと、
「それは運命だったのかもしれない」と自分を納得させようとします。
確かに、運命という言葉には安心感があります。
「努力しても変わらないなら、仕方がない」と思えば、痛みを一時的に和らげてくれるからです。
しかし、アドラー心理学の創始者アルフレッド・アドラーは、こう警告します。
「『運命を信じる』という考え方は、しばしば逃避にすぎない。
建設的な努力から逃げているのだ。」
つまり、“運命を信じる”という言葉の裏には、現実に向き合う勇気の欠如が潜んでいるのです。
「運命を信じる」は、努力をやめる言い訳になる
アドラー心理学では、人の行動を決めるのは「過去」ではなく「目的」だと考えます。
つまり、どんな過去を持っていようと、今どう生きるかは自分で決められるという前提です。
それにもかかわらず、「運命だから仕方がない」と言ってしまうのは、
努力や選択の責任を“運命”に委ねてしまうこと。
たとえば――
- 「家庭環境が悪かったから、自分はこうなった」
- 「才能がないから、この仕事は向いていない」
- 「人間関係は縁だから、変えようがない」
こうした考え方は、自分の人生の舵を放棄しているようなものです。
アドラーは、それを“間違った心の支え”と呼びました。
運命とは「信じるもの」ではなく「切り拓くもの」
アドラー心理学の立場は明確です。
「運命は信じるものではなく、切り拓くものである。」
この一文は、アドラーの“行動の哲学”を象徴しています。
人生における課題は、与えられたものではなく、自分がどう向き合うかで意味が変わる。
運命を“信じる”という姿勢は受け身であり、
運命を“切り拓く”という姿勢は能動的で、創造的です。
つまり、運命とは“待つもの”ではなく、“動かすもの”。
その違いが、人生を大きく分けるのです。
「運命を切り拓く」ために必要な3つの勇気
アドラー心理学において、「勇気」は人生を前進させるためのキーワードです。
では、運命を切り拓くための“3つの勇気”とは何でしょうか?
1. 自分の選択を引き受ける勇気
「誰かのせい」や「運命のせい」にせず、今の自分の選択を自分で引き受けること。
それは、自己責任ではなく“自己決定”の感覚です。
アドラーは、「人は状況に支配されるのではなく、意味づけによって支配される」と言いました。
自分がどう捉えるかを選ぶ力こそ、人生を切り拓く第一歩です。
2. 変化を恐れず、行動する勇気
「運命」とは、行動しない理由として最も便利な言葉です。
しかし、現実を変えるのは“行動”以外にありません。
アドラー心理学では、「行動が感情を変える」と考えます。
不安や恐れを感じたままでも、一歩動くことで心の状態が変わり、
それが新しい可能性を生むのです。
3. 他者とつながる勇気
アドラーは、「人間の幸福は、他者とのつながりにある」と説きました。
孤立しているとき、人は運命や宿命に頼りたくなります。
しかし、誰かと支え合うことで、運命の重さを分け合えるようになります。
運命を切り拓くとは、自分だけで戦うことではなく、共に生きることなのです。
「逃避」と「受容」は違う
アドラー心理学は、現実を否定するわけではありません。
病気・貧困・失敗・別れなど、どうにもならない出来事も確かにあります。
しかし、重要なのはそれを「運命だから」と受け入れて諦めることではなく、
「今の自分に何ができるか」を見つけ出す姿勢です。
- 「できないこと」ではなく「できること」に焦点を当てる
- 「過去」ではなく「これから」にエネルギーを向ける
- 「嘆く」よりも「創る」方向へ思考を転換する
これが、アドラーの言う「建設的な方向に向かう努力」です。
「運命に逃げる」人と「運命を切り拓く」人の違い
| 視点 | 運命に逃げる人 | 運命を切り拓く人 |
|---|---|---|
| 思考 | 「仕方ない」「もう無理」 | 「どうすれば変えられるか」 |
| 行動 | 現状維持・言い訳 | 小さくても行動を起こす |
| 感情 | 他者や環境に依存 | 自分の選択に誇りを持つ |
| 結果 | 不満と停滞 | 成長と達成感 |
アドラー心理学が目指すのは、後者の「能動的な人生」です。
それは、環境や運命に抗うというより、自分の手で意味をつくる生き方です。
運命を変えるとは、「自分の生き方を変える」こと
アドラーは、「運命を変える魔法はない」と明言しています。
しかし、“生き方を変える力”は、誰の中にも存在します。
人は、過去の出来事を変えることはできません。
でも、「その出来事にどんな意味を与えるか」は、いつでも変えられる。
つまり、運命とは「起きたこと」ではなく、「それにどう向き合うか」なのです。
まとめ:「運命に逃げるな、運命を切り拓け」
- 「運命だから仕方ない」は、努力をやめるための言い訳
- アドラー心理学は「運命を信じるな、運命を切り拓け」と説く
- 人生を変えるのは、過去ではなく“目的”と“行動”
- 運命を切り拓くためには、勇気・行動・つながりが必要
- 運命とは、与えられるものではなく“創り出すもの”
アドラー心理学が教えてくれるのは、運命を変える方法ではなく、
「運命にどう立ち向かうか」という“生き方”そのものです。
他人や環境に運命を委ねるのではなく、
自分の手で、選び、動き、意味を創り出す。
その瞬間から、あなたの人生は“運命に支配される側”から“運命を創る側”へと変わります。
