誰もが一度は「不安」にとらわれ、落ち着かない気持ちになった経験があるでしょう。子どもの将来、仕事の成果、天候や交通状況、投資の行方…。気にしても仕方がないと分かっていても、どうしても心配になってしまうものです。
古代ギリシャの哲学者エピクテトスは『語録』の中でこう語りました。
不安げな人を見ると不思議に思う。いったい何を欲しているのだろうか。自分の力の及ばないものを欲していなければ、どうして不安に襲われるだろうか。
この言葉は、不安の正体をシンプルに突いています。私たちが不安を抱くのは、「自分ではコントロールできないこと」を望んでいるからなのです。
不安は「コントロールできないもの」への執着から生まれる
例えば次のような状況を思い浮かべてみましょう。
- 息子を心配する父親 → 「世界がいつも安全であってほしい」と願う
- 焦っている旅行者 → 「天気が崩れないでほしい」「渋滞が解消してほしい」と願う
- ピリピリした投資家 → 「市場が好転して利益が出てほしい」と願う
これらの願いはすべて「自分の力では変えられないもの」です。だからこそ、不安は尽きることなく私たちを支配するのです。
不安は心を消耗させるだけ
不安に駆られて時計を何度も確認したり、天気予報や相場を気にして落ち着かなくなったり…。こうした状態は、まるで「心の平穏を犠牲にして願いをかなえようとする」カルト的な祈りに近いものです。
しかし冷静に考えれば、不安になったところで現実が変わるわけではありません。むしろ集中力や判断力を奪い、ますます状況を悪化させることすらあります。
不安にとらわれないための問いかけ
エピクテトスの教えを日常に活かすなら、不安を感じたときに自分に問いかけてみましょう。
- なぜ心が乱れているのか?
その原因は「自分でコントロールできないもの」への執着ではないか。 - 今、自分をコントロールできているか?
呼吸や態度、考え方は自分の選択次第で整えられる。 - 不安になって何か得られるか?
不安そのものは何も解決せず、ただ心を消耗させるだけ。
この問いかけを繰り返すことで、不安を手放す練習になります。
不安を手放すことで得られる自由
不安を完全になくすことは難しいですが、「自分がコントロールできるもの」と「できないもの」を区別できれば、不安の多くは自然と薄れていきます。
- 他人の評価や未来 → コントロールできない
- 自分の努力や態度 → コントロールできる
このシンプルな視点を持つだけで、不安に振り回される時間は大幅に減ります。心が軽くなり、エネルギーを本当に大切なことに使えるようになるでしょう。
まとめ
不安の種は「自分の力で変えられないもの」を欲することから生まれます。
だからこそ、不安を感じたときは自分に問いかけてみましょう。
- これは自分にコントロールできることか?
- 不安になっても何か良いことがあるのか?
心の平穏は外部の出来事に左右されるものではなく、自分の姿勢次第で守れるものです。今日から、不安に支配されず、自分の人生を主体的に歩む第一歩を踏み出してみませんか。