♟️ チェスから学べるもの⑤「人間万事塞翁が馬」──フランクリンが教える“運に振り回されない生き方”
■ チェスが教える「人生の浮き沈み」
フランクリンは、チェスを単なる娯楽としてではなく、人生の縮図として見ていました。
その中で第5の教訓として挙げたのが、「人間万事塞翁が馬」という考え方です。
「ある特定の指し手がうまくいくと思い込みが生じ、その結果かえって不注意になって、
これまで得てきたものより、これから先に失ってしまうものが多くなってしまう。」
この一文が象徴しているのは、「幸運」も「不運」も、一時的なものにすぎないということ。
人生でも同じです。
成功したと思った瞬間に油断が生まれ、失敗したと思った出来事が、後の幸運を呼ぶことがある。
フランクリンはこの不思議な人生のバランスを、チェスの盤上で見抜いていたのです。
■ 「成功のあとに訪れる油断」が、最大の敵
誰でも、うまくいった瞬間ほど気が緩むものです。
フランクリンはそこに、人生最大の落とし穴があると警告します。
チェスのプレイヤーが「これは勝った」と思った瞬間、
慎重さが失われ、思いがけない一手で逆転されることがあります。
フランクリンは言います。
「成功したと思い込むと、不注意になり、これまで得たもの以上に失う。」
つまり、勝利の瞬間こそ、最大の危険が潜んでいる。
それは仕事でも、人間関係でも、同じことです。
成功しても、調子に乗らない。
勝っても、驕らない。
その姿勢こそ、フランクリンが説く“運に左右されない強さ”なのです。
■ 「失敗」もまた、次への備えを育てる
フランクリンはまた、失敗にも価値があると語ります。
「損失をこうむったことで、かえって注意深くなり、損失が挽回できることもある。」
つまり、失敗は慎重さと成長を生むチャンスなのです。
たとえば、
- 一度ミスをしたからこそ、次はリスクを予測できる。
- 一度失敗を味わったからこそ、仲間の痛みがわかる。
- 一度諦めかけたからこそ、最後までやり抜く力が育つ。
こうした“学び”を重ねた人は、失敗の痛みを糧にして、確実に強くなります。
フランクリンの言う「損失の中にも利益を見出す」姿勢は、現代のビジネス心理学にも通じます。
■ 「落胆しすぎるな」「あきらめるな」
フランクリンは、運の浮き沈みをこうまとめています。
「敵のほうがうまくいっているからといって、落胆しすぎる必要はない。
最後の最後の局面で王手をかけることができるかもしれないのだから、あきらめる必要もない。」
つまり、運の良し悪しに一喜一憂しない心の安定こそ、真の勝利なのです。
ビジネスで結果が出ないときも、
「今は敵が優勢なだけ。まだ終わっていない」と思える人ほど、長く生き残る。
一方で、「もうだめだ」と諦めた瞬間に、勝機は消えてしまう。
この“粘り強さ”が、フランクリン流の人生戦略です。
■ 「運」に頼らず、「判断」に集中せよ
フランクリンの教えには、運という不確かなものに左右されない理性が貫かれています。
彼はチェスを通じて、
「運ではなく、思考で勝て」
というメッセージを伝えています。
人生でも同じです。
天気のように変わる運を嘆くより、状況を冷静に分析し、次の一手を考える。
それが、真に用心深く、慎重な人の生き方なのです。
■ フランクリン流「塞翁が馬」の生き方3原則
- 成功しても油断しない
勝利の瞬間にこそ、気を引き締める。 - 失敗から学ぶ
損失を恐れず、次の改善に変える。 - 最後まであきらめない
今の不利は、未来の逆転への伏線かもしれない。
■ まとめ:「運の波」に乗るより、「心の軸」を保て
ベンジャミン・フランクリンの言葉:
「敵がうまくいっているからといって、落胆しすぎる必要はない。」
これは単に“前向きに生きよう”という励ましではありません。
運に一喜一憂せず、自分の判断・努力・姿勢を信じろという哲学です。
人生とは、勝ったり負けたりの繰り返し。
大事なのは、「勝ち続けること」ではなく、「立ち続けること」。
フランクリンが教えるのは、
「運を恐れず、淡々と最善を尽くす知恵」
なのです。
