『投資が止まった国・日本――実質成長を奪った30年の教訓』
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古代ローマの哲学者セネカは悲劇『オエディプス』の中でこう語りました。
多くの者は不安そのものによって毒される。運命を恐れるうちに、その運命に陥ることになろう。
私たちが抱く「不安」は、単なる心の揺らぎにとどまらず、時に現実をもゆがめます。恐れていたことが、まるで引き寄せられるかのように現実化してしまうのです。
セネカはローマ皇帝ネロの師として仕えました。ネロの暴走を止めようとしましたが、恐怖と不安に支配された皇帝は母や妻を殺し、やがて師であるセネカ自身に刃を向けます。
権力と不安が結びつくと、破壊的な行動を生み出します。
こうした例は歴史上も現代社会でも数多く存在します。不安が人を狂わせ、恐れていた最悪の事態を自ら作り出してしまうのです。
インテルの元CEOアンディ・グローブは「パラノイアだけが生き残る」と語りました。危機感を持ち続けることは、確かに成功をつかむ要因になるかもしれません。
しかしその危機感が「恐怖」となり、「不安」へと変わったとき、逆に人を滅ぼします。常に最悪を想像し、行動が過剰になり、冷静さを失っていく…。その果てに待っているのは成功ではなく崩壊です。
不安はただの気持ちではなく、私たちの行動に影響を与え、結果を現実化させます。
まさに「不安は現実になる」のです。
では、どうすれば不安に飲み込まれずにすむのでしょうか。
不安そのものは人間の自然な感情です。しかし、それに支配されてしまうと、恐れていた未来を自分の手で呼び寄せてしまいます。
セネカが教えてくれるのは、「不安を消すこと」ではなく「不安に振り回されないこと」。
自制と理性を保ち、冷静な判断を積み重ねることで、私たちは不安を現実にせず、むしろ未来を良い方向へ導くことができるのです。