『リセットする習慣』に学ぶ|心のざわつきを整える「禅のリセット法」62のヒント
『リセットする習慣』──禅が教える、心を“今ここ”に戻す方法
私たちは日々、忙しさや人間関係の中で“感情の波”に翻弄されています。
怒り、焦り、落ち込み――。
一度ネガティブな感情に囚われると、それがまた新しいストレスを生み、気づけば心が疲れきってしまう。
そんな時にこそ手に取りたいのが、禅僧であり庭園デザイナーでもある枡野俊明さんの『リセットする習慣』(明日香出版社)です。
本書は、禅の教えを現代の日常に落とし込み、心を“今この瞬間”に戻すための62のヒントを紹介しています。
1. 「自我」を手放せば、心はもっと自由になる
私たちはつい他人と比べてしまいます。
SNSで誰かの成功を見ると焦り、他人の評価で一喜一憂する――。
そんな“比較の罠”に心をすり減らしている人は多いはずです。
禅では「自分をよく見せたい」という思いを**“自我”**と呼び、それを手放すことを説きます。
「放下着(ほうげじゃく)」――すなわち、プライドや執着を捨てなさいという教えです。
“ありのままの自分を、自分で認めることができれば、他人に振り回されない。”
完璧でなくていい。
他人の評価ではなく、自分の中に“静かな満足”を見いだす。
それが心を軽くする最初のリセット習慣です。
2. 「行き詰まったら、距離を置く」──問題を俯瞰する視点を持つ
どうしてもうまくいかない時、私たちは同じことを何度も繰り返してしまいがちです。
著者は、そんな時こそ“一歩引いて眺める”ことをすすめます。
江戸時代の禅僧・風外和尚は、悩める豪商に「虻(あぶ)」を見せたといいます。
障子に何度もぶつかりながら外へ出られない虻――。
「人間もあの虻と同じだよ。抜け道はあるのに、同じ場所で苦しんでいる。」
視点を変えれば、出口は見える。
行き詰まりを感じたら、散歩をする、空を眺める――。
たった数分の“距離”が、心の風通しを変えてくれます。
3. 「前後際断」──過去にも未来にもとらわれず、今を生きる
禅の核心にあるのが、「前後際断(ぜんごさいだん)」という考えです。
意味は、「過去(前)とも未来(後)とも切り離された、“今”だけを生きること」。
「今この瞬間に集中することが、充実した一生につながる。」
私たちはつい、「これが終わったら…」「明日こそ…」と未来に心を向けがちです。
けれども、人生を積み重ねているのは、いつだって“今”。
「今できることは、ひとつだけ。」
この言葉を胸に、目の前のことに全力を注ぐ――それが“禅的リセット”の基本です。
4. 「呼吸を整える」だけで、心は静かになる
集中できないとき、イライラするとき、まず試してほしいのが丹田呼吸です。
丹田(たんでん)はおへその下7センチほどにある“心の軸”。
姿勢を正し、そこを意識して深く息を吸い、ゆっくり吐く。
これを数回繰り返すだけで、脳が静まり、感情の波がおだやかになります。
禅語「一息に生きる」には、
「息を吐いて吸う、その一瞬を全力で生きよ」
という意味があります。
スマホを手放し、仕事をいったん止めて、たった一呼吸に心を込める。
それだけで、心は“今ここ”に戻ってくるのです。
5. 「利他」で生きると、心が整う
仏教では「すべてのものは因縁でつながっている」と説きます。
だからこそ、「自分の得よりも、相手の喜びを優先する」生き方を勧めるのです。
禅語「利他」は、**“相手の幸せが自分の幸せになる”**という考え方。
短期的には損をしても、長い目で見れば、心は清らかに、関係も穏やかになります。
「自分のため」より、「誰かのため」に動くとき、人は最も安らかでいられる。
人間関係で疲れたときこそ、
「この人のために何ができるか」と考えてみましょう。
その瞬間、心のざわめきが少し静まるはずです。
6. 「自由無碍」──“こうあるべき”から抜け出す
「この仕事、自分に向いていないのでは?」
そう感じることがある人へ。
禅では、「こうあらねばならない」と自分を縛ることを**“執着”**と呼びます。
そこから自由になるための言葉が「自由無碍(じゆうむげ)」――
つまり、“とらわれないで生きる”ということ。
流れに逆らうより、流れに身をまかせて、
今の場所で一つひとつの仕事を丁寧にこなす。
それが、心のリセットを呼び戻す最も自然な方法です。
7. 「ぼーっとする時間」にこそ、価値がある
多くの人が「生産性のない時間=ムダ」と考えがちですが、
禅の視点では、“何もしない時間”が心のメンテナンスになると考えます。
著者はこう語ります。
「雲を眺め、夕日を見て、ぼーっとする時間こそ、脳をリフレッシュさせる。」
坐禅もまた、「動」から「静」に切り替えるための習慣です。
無理に“何も考えない”のではなく、
浮かんだ思考を追わずに、ただ消えていくままに任せる。
それが“無心”という心の状態です。
“ぼーっとする”時間は、サボりではなく“整える時間”。
焦りや不安に疲れたら、静かに立ち止まってみましょう。
8. 「おかげさま」という感謝が、心をやわらかくする
禅では、「命はご先祖からの預かりもの」と考えます。
だからこそ、生きている今この瞬間は“与えられた時間”であり、感謝の対象です。
「おかげさま」という言葉は、“陰で見守ってくれる存在”への感謝。
朝、太陽を見て「今日も生かされている」と思えたら、
それだけで心は静まり、穏やかなリセットが生まれます。
感謝は、“心のリフレッシュボタン”。
どんなに疲れていても、「ありがとう」を思い出すことで、
心はもう一度、軽やかに動き出します。
まとめ|心がざわつくときこそ、“リセットの習慣”を
『リセットする習慣』は、禅の教えをベースにした“心の整え方”の本です。
特別な修行も、難しい理論もいりません。
1日のどこかで「呼吸を感じる」「今に集中する」「感謝する」――
そんな小さな習慣の積み重ねが、穏やかな毎日をつくります。
ネガティブな感情は、消そうとしなくていい。
ただ、“今この瞬間”に戻ること。
それだけで、心はもうリセットされています。
