『ポジティブフィードバック』|人と組織を劇的に変える“承認の技術”とは?
『ポジティブフィードバック』──人と組織が“劇的に変わる”承認の力
テレワークや世代間ギャップ、コミュニケーション不足――。
現代の職場には、かつてないほど「人のつながり」が問われています。
そんな時代に必要なのが、「人を動かす技術」ではなく「人を信じる技術」。
それを体系的に教えてくれるのが、ヴィランティ牧野祝子さんの
『国際エグゼクティブコーチが教える 人・組織が劇的に変わる ポジティブフィードバック』です。
本書は、単なる「褒め方」指南ではありません。
相手の強みを引き出し、チームの信頼を高め、組織の成果を伸ばす――
そんな“承認のマネジメント”を具体的に教えてくれます。
1. ポジティブフィードバックとは「相手の可能性を信じる力」
ポジティブフィードバックとは、
**「相手の行動や成果、存在そのものを認め、可能性を信じるコミュニケーション」**です。
一般的なフィードバックは「できていない点」に焦点を当てがちですが、
ポジティブフィードバックは「できている点」に光を当て、
本人が自信と主体性を持てるように導きます。
心理的安全性が生まれ、
「成果 → 承認 → やりがい → 成果」という好循環が回り始める。
これが、強いチームの根幹となるのです。
2. 4つの承認で信頼が深まる
著者は、フィードバックには4つの承認があると述べています。
- 結果承認:成果そのものを認める(「成約おめでとう、資料がわかりやすかったね」)
- 行為承認:プロセスを評価する(「準備の段階で細部まで丁寧に仕上げていたね」)
- 存在承認:その人の存在に感謝を伝える(「いつもチームを明るくしてくれて助かるよ」)
- 可能性承認:未来への信頼を示す(「君なら次はさらに良くできる」)
特に「可能性承認」は、
厳しいフィードバックを伝えるときにも欠かせません。
「期待しているからこそ伝える」と前置きすれば、
相手は自分が信頼されていると感じ、前向きに受け取ることができます。
3. 承認8割、改善2割が理想
心理学の研究でも、**ポジティブとネガティブの比率が「8:2」**のとき、
チームのパフォーマンスは最も高くなるとされています。
つまり、部下の改善点を伝えるときも、
「良い点でサンドイッチする」ことが重要です。
✗「ここが悪かった」
〇「この部分はすごく良かった。次はここを少し工夫してみよう」
ネガティブなフィードバックを直接ぶつけるより、
ポジティブな文脈の中に組み込むことで、
相手は防御的にならず、自分から改善へと動き出します。
4. 「強み」に焦点を当てた目標設定
部下を成長させるうえでのポイントは3つ。
- 強み・得意にフォーカスする
- 得意を活かせる仕事を任せる
- 実力+5%の“達成可能な挑戦”を設定する
人は「できた」という経験を積み重ねることで、
自信と行動力が高まります。
小さな成功を承認し続けることが、
やがて大きな成果を生むのです。
5. チームを変える「360度フィードバック」
本書の特徴的なテーマのひとつが、「360度フィードバック」。
上司からだけでなく、同僚・部下・取引先など
あらゆる方向からのフィードバックを受ける仕組みです。
この仕組みを導入した企業では、
離職率の低下、顧客満足度の向上、チームの一体感向上など、
数多くの成果が報告されています。
重要なのは、評価ではなく“対話”を重ねること。
互いに「フィードバックしていい関係性」を築くことで、
組織全体の心理的安全性と学習力が高まります。
6. 「フィードバックをおねだり」してみよう
部下の立場でも、上司からのフィードバックを待つのではなく、
「おねだり」する姿勢が大切です。
たとえば、
「先ほどのプレゼン、どの点が良かったですか?」
「改善すべき点があれば教えてください」
この一言で、コミュニケーションの扉が開きます。
自ら問いかけることで、自分の成長意欲を示せるだけでなく、
上司の理解や信頼も得られるのです。
7. ポジティブフィードバックが組織文化を変える
Z世代の部下が増える今、
「指示」や「叱責」よりも「共感」と「承認」が求められています。
彼らは安定志向と同時に、社会貢献意識や成長意欲も高い世代。
つまり、“正しく承認される環境”を求めているのです。
ポジティブフィードバックが当たり前になると、
チームには以下の変化が起こります。
- ミスを恐れず挑戦するようになる
- 互いに感謝を伝える文化が育つ
- 離職率が下がる
- 成果と幸福度が共に高まる
リーダーの言葉ひとつが、
チームの空気を、そして未来を変えるのです。
結論|「人は、信じられることで伸びていく」
ヴィランティ牧野氏は言います。
「ポジティブフィードバックとは、信頼の表現である。」
信じることは、甘やかすことではありません。
相手の可能性を信じ、期待を伝え、成長を促すこと。
それが“人を動かす最高のスキル”です。
この本を手に取ると、
チームを変えたいと思ったときに「何から始めるべきか」が明確になります。
まずは、今日一言でもいい。
「ありがとう」「助かったよ」と伝えるところから始めてみてください。
