16歳のフランクリンが実践した「ベジタリアン生活」:節制が生んだ学びと成功の原点
16歳という多感な年齢で、肉を断ち、野菜中心の生活を選んだ少年がいました。
それが、のちに「アメリカ建国の父」と呼ばれるベンジャミン・フランクリンです。
彼が『自伝』の中で語るベジタリアン生活の実践記録は、単なる食習慣の話ではありません。
そこには、フランクリンの人生哲学――「節制と学びの両立」という考え方が鮮やかに表れています。
■ きっかけは1冊の本との出会い
「16歳の頃、ベジタリアンをすすめる本に出会い、さっそく実践してみることに決めた。」
まだ印刷屋で徒弟として働いていた若き日のフランクリン。
ある日、菜食主義を推奨する本を読み、その内容に深く共感します。
当時の食事といえば、肉や魚が中心。
職場でも肉料理が日常であり、彼の決断は非常に珍しく、
周囲の職人たちからは“変わり者”扱いされました。
「おまえは変わり者だ、と兄に叱られた。」
しかしフランクリンは引き下がりません。
理性で正しいと思うことは、たとえ孤立しても貫く――
この強い意志こそ、のちに彼を成功へ導く原点となりました。
■ 自炊で生まれた「時間」と「お金」の自由
反対を押し切ってベジタリアンを貫いたフランクリンは、
食事を自分で管理する方法を編み出します。
「兄に、1週間分の食費の半分を現金で支給してくれるなら、
食事は自分ですると提案したら、即座に了解してくれた。」
そして彼は、自炊をスタート。
メニューはシンプルで、ジャガイモ、米、プディング、パン、ビスケットなど。
驚くべきことに、食費は半分で済み、残りは本代に回せたのです。
彼にとって、菜食は節約術であると同時に、
知識を得るための投資法でもありました。
「残りの半分を本代に回すことができた。」
さらに、自炊によって昼休みに職場に残れるようになり、
その時間を読書や勉強に充てたのです。
「時間が確保できるだけでなく、頭もクリアになり、勉強がはかどった。」
これは、まさに**「節制が自由を生む」**というフランクリン哲学の実践例でした。
■ ベジタリアンがもたらした集中力と明晰さ
フランクリンはベジタリアン生活の効果を、
単なる節約や習慣ではなく、頭の冴えとして感じていました。
「軽食で済ませたおかげで、頭もクリアになった。」
現代でも、肉や脂質を多く摂ると消化にエネルギーを使い、
眠気や集中力の低下を招くことが知られています。
つまりフランクリンは、当時の経験から、
「食事の軽さが思考の軽やかさにつながる」ことを実感していたのです。
彼にとって、ベジタリアン生活は単なる健康法ではなく、
知的生産性を高める手段だったと言えるでしょう。
■ 「節制」は、すべての徳の土台である
フランクリンがのちにまとめた『13の徳』の第一項は「節制」でした。
「満腹してだるくなるまで食べるな。酔っぱらうまで飲むな。」
この最初の徳目こそ、若き日のベジタリアン生活から得た教訓です。
節制とは、単に欲望を抑えることではなく、
目的のために理性で行動を選ぶ力です。
彼は、食欲という本能を理性でコントロールすることで、
時間・お金・集中力という3つの資産を手に入れました。
そのバランス感覚が、後の発明・政治・哲学など、
幅広い分野での成功を支えることになります。
■ 現代にも通じる「フランクリン式・食のマインドセット」
フランクリンのベジタリアン実践から学べるのは、
「食べ方=生き方」であるということです。
現代人が彼の哲学を応用するなら、次のような形になります。
- 食の目的を“快楽”から“エネルギー”へ切り替える
食は楽しみであると同時に、思考と行動の燃料。
頭を使う仕事ほど、軽い食事で集中を維持できます。 - 自炊で「お金と時間の自由」を得る
フランクリンのように、外食を減らし、
浮いた時間とお金を学びや自己投資に回す。 - 節制は習慣の第一歩
彼が『13の徳』を日課にしたように、
食生活の自己管理は、すべての成長の基礎になります。
■ まとめ:「食を制する者は、学びを制する」
フランクリンにとって、ベジタリアン生活は単なる健康法ではなく、
「理性で生きる」訓練でした。
「食欲を理性でコントロールできれば、人生の多くを支配できる。」
食費を節約し、時間を生み出し、集中力を高める――
そのすべてが、彼の成功哲学の礎となりました。
そして、この若き日の習慣は、のちに彼が説いた「13の徳」や「節制の教え」へとつながります。
現代社会では、情報も食もあふれています。
だからこそ、フランクリンのように**“必要なものを見極め、理性で選ぶ”**ことが求められています。
節制とは、自由への第一歩である。
今日のランチを少し軽くして、その時間を学びに充ててみる。
それが、フランクリンが16歳で始めた「知的節制の実践」への第一歩かもしれません。
