フランクリン流・語彙力の鍛え方:「詩に変換して書き戻す」創造的ライティング法
「うまい文章を書くためには、
すぐに使えるボキャブラリーが必要だ。」
――これは、ベンジャミン・フランクリンが『自伝』で述べた言葉です。
彼は10代の頃から、独学で文章の構成力を磨きましたが、
次に直面した課題は**「語彙力の不足」**でした。
思考を表現するための「ことば」が足りない。
そこでフランクリンは、独創的かつ実践的な方法で語彙を増やしていきます。
そのトレーニングは、現代の私たちにも役立つ「使える学び方」なのです。
■ フランクリンが見つけた“語彙力の壁”
「文章の組み立て方は独学で方法を編み出したが、
うまい文章を書くためには、
すぐに思い出してつかえるボキャブラリーが不足していることがわかった。」
文章の構成や論理は理解できても、
適切な言葉が出てこない――。
これは、文章を書く人なら誰もがぶつかる壁です。
そしてフランクリンは、その壁を乗り越えるために
過去の「詩作の習慣」を思い出します。
■ 詩を書くことで「言葉を探す力」を鍛える
「詩をつくるには韻を踏むことが重要なので、
おなじ意味でも音や長さの異なることばで言い換える必要がある。」
詩を書くとき、人は「言い換え」を繰り返します。
リズムや韻に合う言葉を探す過程で、
自然に多くの類語・関連語を頭にストックしていくのです。
たとえば、
- “happy” を “glad”“joyful”“pleased” に言い換える
- “bright” を “shining”“radiant”“brilliant” に変える
こうした「言い換えの訓練」は、
辞書で単語を暗記するよりもずっと効果的です。
なぜなら、言葉のニュアンスを体感的に理解できるから。
フランクリンは、この「詩作」というクリエイティブな手段を
語彙力アップの訓練として再利用したのです。
■ フランクリン流「詩→文章」トレーニング
「『スペクテーター』の文章を何編か選んで、詩の形に直してみた。
時間がたって、すっかり元の文章を忘れてしまった頃、
ふたたび文章の形に直してみる。」
これは、まさに天才的なトレーニング法です。
① 文章を詩に変換する
フランクリンは『スペクテーター』の名文を題材に選び、
その内容を詩のリズムで書き直しました。
たとえば、
“Virtue brings peace, and vice brings pain.”
(徳は平和を、悪徳は苦しみをもたらす)
この一文を詩として再構成すると、
“When virtue rules, our hearts remain;
In vice, we chase but joy in vain.”
意味を保ちつつ、韻を踏み、音の響きを意識する――
ここで語彙と表現の幅が大きく広がります。
② 時間を置いてから散文に戻す
しばらくしてから、詩の記憶だけを頼りに、
再び文章(散文)の形に戻します。
このとき、詩をつくる過程で出会った「類語」や「比喩表現」が、
自然と文章の中に織り込まれるようになるのです。
つまり、
詩を通して鍛えた語感が、散文に深みを与える。
■ 「詩的感性」は語彙力を超えた力になる
この方法のすばらしい点は、
単語の数を増やすだけでなく、言葉の感情的な力を育てることにあります。
詩を書くことで、
- 音の響き
- リズム
- 意味の強弱
を意識するようになる。
その結果、同じ意味でもより的確で印象的な言葉を選べるようになります。
フランクリンはこの訓練を通して、
文章に「温度」と「リズム」を宿す術を身につけたのです。
■ 現代でも使える!フランクリン式語彙トレーニング
この方法は、英語でも日本語でも応用できます。
以下のステップで、あなたも今日から始められます。
【実践ステップ】
- 好きな文章(コラム・小説・スピーチなど)を選ぶ
- その内容を短い詩に書き直す(五行程度でOK)
- 数日後、詩をもとに文章を書き直す
- 元の文章と比較して、言葉や構成の違いを分析する
【ポイント】
- 「韻」や「語感」を意識することで、語彙の幅が広がる
- 自分の書いた詩を“翻訳”する感覚で文章を再構築する
- 感性と論理の両方を鍛えられる
この方法は、ビジネス文書にもクリエイティブライティングにも有効です。
■ 語彙力とは「引き出す力」である
フランクリンは、「知っている単語」よりも
「使える単語」を増やすことを重視しました。
つまり、
語彙力=知っている単語の数 × 思い出す速さ
彼のトレーニングは、まさにこの“思い出す力”を磨くものでした。
詩を通して、ことばを「使う筋肉」として鍛えたのです。
■ まとめ:創造的に遊ぶことが、最高の学びになる
「そんな習慣をつづけていると、頭のなかに
単語のストックが蓄えられることになる。」
語彙力を高める秘訣は、暗記ではなく「遊び」にあります。
フランクリンは、詩を“遊びながら学ぶ手段”として使い、
創造的に自分のことばを育てていきました。
言葉を愛する人にとって、
学びは努力ではなく、創造の喜びそのもの。
語彙は、頭で覚えるものではなく、
心で使いこなすものだ。
あなたも今日から、
フランクリンのように“詩的に学ぶ”語彙トレーニングを始めてみませんか?
