相手を否定せずに人を動かす ― フランクリンに学ぶ「説得の技術」

論破よりも共感 ― 説得の本質は「相手を立てること」

若き日のベンジャミン・フランクリンは、議論好きで負けず嫌いでした。
しかし、ソクラテス式問答法を学んだことで、**「相手を言い負かすよりも、相手に気づかせる方が強い」**と理解します。

そしてその後、フランクリンはさらに一歩進み、**「相手を否定しない説得法」**を自分流に確立していきました。
それは、表現の一つひとつに謙虚さと柔らかさを持たせる技術です。

「たしかに」「疑いなく」といった断定的な言葉は使わず、
「わたしにはそう思える」「これこれの理由でそう考えるべきだと思う」と言い換えるようにした。

彼はこの習慣を身につけたことで、人を巻き込み、共に動かす力を得たのです。

断定を避けることが、信頼を生む

現代のビジネスシーンでも、「断定的な発言」が不信感を生むケースは少なくありません。
会議やチーム内で「絶対こうすべきだ」と言い切ると、相手の意見を封じてしまうことがあります。

一方で、フランクリンのように

• 「私の考えでは」
• 「もし間違っていなければ」
• 「こう考える理由がある」

と、余白のある表現を使うと、相手は安心して耳を傾けてくれます。
人は「自分の意見が尊重されている」と感じたときに、初めて相手の意見も受け入れる準備ができるのです。

つまり、説得とは相手を屈服させることではなく、共に納得をつくるプロセスだといえます。

フランクリン流「柔らかい言葉遣い」が人を動かす

フランクリンが使っていた表現の特徴は、どれも思いやりと仮定の形を持っています。
彼が多用した言い回しを現代風に言い換えると、次のようになります。

• 「おっしゃる通りかもしれませんが、こういう見方もあるかもしれませんね」
• 「もし私の理解が正しければ、こうではないでしょうか」
• 「私にはこのように思えるのですが、どう思われますか？」

これらの言葉は、相手を敵ではなくパートナーとして扱う力を持っています。
その結果、議論が感情的にならず、建設的な方向へと進みます。

自説を通すために「柔らかさ」を選ぶ

フランクリンは、自分の考えを推し進める必要がある場面でも、
あくまで謙虚で柔らかな言葉を使うよう心がけたといいます。

それは、「相手のプライドを傷つけずに、自分の目的を達成する」ための知恵でもありました。

彼の自伝には、長年温めてきた構想を実現する際にもこの方法が役立ったとあります。
つまり、穏やかな表現が最終的には最強の説得力になるということです。

現代に応用できるフランクリンの説得術

このフランクリンの考え方は、現代のコミュニケーションにもそのまま通用します。
例えば、職場やビジネスシーンではこんな形で応用できます。

1. 会議での意見表明
   　→ 「私の理解ではこうですが、他の視点もあるかもしれませんね。」
2. 顧客との交渉
   　→ 「ご指摘の通りです。もし許されるなら、別の提案もご覧いただけますか？」
3. チームでの対話
   　→ 「自分が間違っているかもしれませんが、こう考えています。」

このような姿勢は、相手に「あなたは信頼できる」と感じさせます。
フランクリンのように、言葉のトーンを変えるだけで結果が変わるのです。

まとめ ― 謙虚な言葉が人を動かす最大の武器

フランクリンの説得法は、単なる話し方のテクニックではありません。
それは、**「他者を尊重する姿勢」**そのものです。

強く言えば人は抵抗しますが、柔らかく問えば、心を開いてくれます。
この原理を理解していたからこそ、フランクリンは政治家としても外交家としても成功を収めました。

「もし私が間違っていなければ」という一言は、
時に何十の論理よりも強く、相手の心に届くのです。

TAKA

理学療法士/ビール

YouTubeContact

理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。