問題解決は「正しさ」より「関係者の顔を立てる」ことから始まる｜円満な対応で信頼を残す力

問題解決は「正しさ」よりも「関係者の顔を立てる」ことが大切

どんなに正しい判断であっても、人が関わる以上、感情や関係性を無視しては問題は解決しません。
とくにビジネスの現場では、「誰が悪いか」よりも「どうすればお互いが納得できるか」が重要です。

かつて、ある若き実業家が資本金をめぐるトラブルを経験しました。パートナーの一人が出資金の払い込みを滞らせ、経営に不安が生じたのです。普通なら「契約違反だ」と責めたくなる場面ですが、彼は冷静に状況を見つめ、感情的な対立を避ける道を選びました。

相手の事情を受け入れ、対立を「協調」に変える

やがて、そのパートナーの方から「パートナーシップを解消したい」との申し出がありました。
理由は、家族の経済的困難、職人としての適性の問題、そして新天地でやり直したいという前向きな思いでした。

実業家はその事情を責めることなく、むしろ「それならお互いにとって良い方向に進もう」と受け止めました。
そして、相手の父親が出した出資金と個人債務を自ら引き受け、円満な形で関係を解消したのです。

この対応によって、誰も傷つけることなく問題は解決しました。結果的に、彼自身の評判も高まり、次の支援者からの信頼も得ることができたのです。

「顔を立てる」ことは「信頼を残す」こと

このエピソードから学べるのは、「問題解決の本質は勝ち負けではない」ということです。
相手を追い詰めて勝っても、関係は壊れ、次の協力者は現れません。
一方で、相手の立場を尊重し、退き際まで気遣う人は「信頼を残す」ことができます。

日本の職場文化でも、「相手の顔を立てる」ことは非常に重要なコミュニケーションスキルです。
たとえば部下のミスを指摘するときでも、本人の努力を認めたうえで課題を伝えれば、相手は前向きに受け止めます。
逆に、正論で責め立てると、たとえ正しくても信頼は失われてしまうのです。

信頼をつなぐ「円満な終わり方」

どんな関係も永遠ではありません。
ビジネスパートナー、同僚、顧客──いつかは関係が終わるときが来ます。
そのときに「どう別れるか」が、その人の人間的な価値を決めると言っても過言ではありません。

実業家のように、円満に関係を終えることができれば、相手はいつまでも悪い印象を持ちません。むしろ「また一緒に仕事をしたい」と思われる可能性すらあります。
問題を解決するだけでなく、関係を未来につなげる解決を目指す――これが、本当の意味での「問題解決力」です。

まとめ｜「正しさ」より「関係」を優先する勇気を

ビジネスや職場での問題解決は、正しいことを言うだけでは前に進みません。
人には感情があり、プライドがあり、事情があります。
それを理解したうえで、相手の立場を尊重し、円満な形を探ることができる人こそ、真の信頼を得られるのです。

トラブルを「勝ち負け」で終わらせず、「信頼を残す終わり方」で締めくくる。
それが、どんな時代にも通用するリーダーシップの本質ではないでしょうか。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。