一生役に立つ学びは「水泳」から──フランクリンが説いた“生きる力”の技術
「理屈だけ覚えて安心していないで、実際に水に入って泳ぎを覚えることをおすすめしたい。」
──ベンジャミン・フランクリン(1769年)
これは、ただの水泳のすすめではありません。
フランクリンが伝えたかったのは、**「実践を通じて身につけることの大切さ」**でした。
■理屈よりも行動が人を助ける
前章(第145節)でフランクリンは「泳ぎを教えるには、まず浮力を信じさせることが大切だ」と述べています。
そしてこの章では、もう一歩踏み込み、こう訴えます。
「誰だろうが、理屈だけで満足せず、水に入って泳ぐことを学んでほしい。」
つまり、知識を持つだけでは人は救われないということ。
実際、どれほど水の性質を知っていても、
いざ落水した瞬間に泳げなければ命を守れません。
これは現代にもそのまま通じます。
- 災害時に必要な防災知識
- 職場でのリスク対応力
- 人間関係での冷静な対処力
どれも「知っている」だけでは不十分で、
「身についている」ことが本当の安心を生みます。
■「水泳」は“生きるためのスキル”
フランクリンはこうも書いています。
「泳ぎ方を身につけていれば、安全であり、恐怖も減り、より幸福になれる。」
水泳は、健康的で愉快な運動であると同時に、
危険に直面したときに「自分を守る力」となります。
つまり彼にとって水泳は、自己防衛の知恵であり、安心して人生を楽しむための技術でした。
現代でいえば、
- 正しいお金の知識
- メンタルケアの方法
- 情報リテラシー
なども、同じ意味での「水泳」にあたります。
フランクリンは18世紀にしてすでに、「教育とは人生を安全で自由にする技術だ」と気づいていたのです。
■子どもにこそ“体で覚える教育”を
フランクリンは続けます。
「もし子どもがいるなら、学業とともに水泳も教える学校に通わせたい。」
これは、体験教育の重要性を示す非常に先見的な発言です。
学業=知識の学び
水泳=体験の学び
この2つを組み合わせることで、
「考える力」と「行動する力」の両方が育ちます。
現代教育でも、STEM教育やアクティブラーニングが注目されていますが、
その本質はまさにフランクリンが説いたこの言葉にあります。
■一度覚えたら一生ものの“生きる技術”
「水泳は、一度覚えたら一生忘れない、役に立つ技術だ。」
この一文は、学びの本質を突いています。
水泳とは、“持続するスキル”の象徴です。
私たちの人生にも、
「一度身につければ、一生使える力」がいくつかあります。
- 書く力(コミュニケーション)
- 計算力(論理的思考)
- 自己管理(健康と時間)
- 学び続ける姿勢
これらはすべて、フランクリンが生涯を通じて実践した“水泳”のような力です。
彼は「水泳」を通して、
**「人間は行動によって自由を得る」**という哲学を語っていたのです。
■まとめ:水に入らなければ、世界は広がらない
フランクリンの水泳論は、今も深い示唆を与えてくれます。
- 理屈だけでなく、実際にやってみる
- 自分の身を守る技術を身につける
- 学びを体験に変える
- 子どもには体で学ぶ環境を与える
そして何より、こう教えてくれます。
「行動できる人こそ、安心して生きられる。」
水に飛び込む勇気が、新しい世界を見せてくれる。
それが、フランクリンが残した“水泳の哲学”です。
