発明の価値は“役立つかどうか”で決まる──フランクリンが提案した「夏時間」の本質
「発明の価値は、それが役に立つかどうかで試される。」
──ベンジャミン・フランクリン(1784年)
パリ滞在中、フランクリンはある朝、太陽の光が部屋に差し込むのを見て驚きました。
「もうこんなに明るいのに、誰も起きていない!」
そこから生まれたのが、後に“夏時間(Daylight Saving Time)”と呼ばれる発想です。
■「太陽光を無駄にしている」と気づいた朝
当時のパリでは、人々が夜更かしをして、
明け方までロウソクの光で活動するのが習慣でした。
倹約家のフランクリンは、その光景を見てこう考えます。
「太陽が無料で照らしてくれているのに、
わざわざロウソクを燃やすとは、なんと無駄なことだろう。」
彼は、昼夜の時間の使い方を逆転させれば、
ロウソクの消費を劇的に減らせると気づきます。
そして、独特のユーモアを交えて
“太陽光を節約する方法(Saving Daylight)”を提案しました。
これが、のちに「夏時間(Daylight Saving Time)」として世界中に広まることになるのです。
■倹約の発想が「イノベーション」を生んだ
フランクリンにとって、発明とは“好奇心”ではなく**「倹約」**から生まれるものでした。
「ロウソクの光は高価であり、太陽光は無料である。」
だからこそ、彼は発明をこう定義します。
「役に立たない発明は、無用の長物にすぎない。」
この思想は、現代でいう「実用主義的イノベーション」にあたります。
彼は、社会を便利にするために発明するのではなく、
無駄をなくし、人々の生活を合理化するために発明することを重視しました。
■「使われてこそ、発明」
フランクリンが生涯で生み出した数々の発明──
避雷針、フランクリンストーブ、遠近両用メガネ、ガラス琴──には、
共通する基準がありました。
それは、「人が実際に使うかどうか」。
どんなに優れた理論や技術でも、
実際の暮らしを改善できなければ意味がない。
この“実用性の哲学”は、現代のプロダクトデザインやビジネス戦略にも通じます。
「人に使われない発明は、ただの思いつきにすぎない。」
■「時間」を節約するという発明
フランクリンが提案した夏時間は、
「光」を節約するだけでなく、「時間」を有効に使うという思想でもありました。
人々が朝早く活動を始めれば、
- エネルギー消費を減らせる
- 生産性が上がる
- 健康にも良い
つまり、時間をデザインすることで、社会を変える発明だったのです。
200年以上たった今も、夏時間は世界の一部で導入されており、
その思想は「持続可能な暮らし」の象徴とされています。
■「役立つこと」が創造の原点
フランクリンの発明哲学を現代風に言い換えるなら、こうなります。
- アイデアは“便利そう”ではなく、“役立つか”で判断する
- 理論よりも実用を優先する
- 人の暮らしを変える工夫こそ、真のイノベーション
つまり、発明とは“人の生活を改善する思いやり”の延長線上にあるのです。
■まとめ:役立つことが、価値を生む
フランクリンが残したこのメッセージは、
300年たった今でもイノベーションの核心です。
- 発明とは、人の生活を便利にするためにある
- 無駄を減らすことは、創造の第一歩
- 実用性こそ、真の価値を決める尺度である
そして彼は、こう結論づけています。
「役に立たない発明は、美しくても空虚である。」
フランクリンの“実用の哲学”は、
AI・IoT・エコの時代を生きる私たちにも、
変わらぬ指針を与えてくれます。
