そのときにふさわしい仕事をせよ――テトスへの手紙3章14節に学ぶ「正しく働く」生き方
「そのときにふさわしい仕事をせよ」――働く目的を見失わないために
新約聖書の「テトスへの手紙」3章14節には、次のように記されています。
「私たちの仲間も、差し迫った必要を満たすために、良い働きを学び、実を結ばない者とならないようにすべきである。」(テトス3:14)
この言葉は、単に「よく働きなさい」という一般的な教訓ではありません。
ここで語られているのは、**“今、自分に求められている働きを正しく果たすこと”**の大切さです。
つまり、「やりたい仕事」と「すべき仕事」は必ずしも同じではないということです。
1. 「やりたいこと」だけを追う働き方の落とし穴
現代は、「好きなことを仕事に」という価値観が広く語られています。
もちろん、自分の情熱を注げる仕事を見つけることは素晴らしいことです。
しかし、人生のある時期には、やりたいことよりも“やるべきこと”を優先すべき時があります。
たとえば――
- 家族の生活が苦しいときに、理想ばかりを追って働かない
- チームが困っているときに、「自分の担当外だから」と動かない
- 社会が必要としている働きに目を背ける
これらはすべて、働く目的を「自分中心」にしてしまっている状態です。
聖書はここで、「正しい仕事とは何かを理解せよ」と教えます。
それは、“自分がしたいこと”ではなく、“今まさに誰かの役に立つこと”です。
2. 「正しく働く」とは、“必要を満たす”こと
テトスへの手紙3章14節にある「差し迫った必要を満たす」という表現には、深い意味があります。
人の働きとは、本来“他者の必要に応えること”である、という考え方です。
職業の種類にかかわらず、働くとは「社会のどこかの欠けを補う」行為。
それができるとき、働きは単なる労働ではなく“使命”になります。
一方で、自分の理想や快適さを優先しすぎると、働きは空回りしがちです。
「誰かを支える」視点を失ったとき、人は簡単に“虚しい働き方”に陥ります。
3. 「今の仕事」があなたを成長させる場所
多くの人が「今の仕事は自分に合っていない」と感じる瞬間があります。
しかし、仕事の“価値”は内容ではなく、取り組む姿勢によって決まります。
たとえ理想とは違っても、いま自分の置かれた環境で最善を尽くすこと。
それが、次のステップへの扉を開く唯一の道です。
「この仕事は自分に合っていない」と口にする前に、
「この仕事を通して自分は何を学べるだろう?」と問いかけてみてください。
どんな仕事にも、成長の糧と使命が隠れています。
4. 「責任ある働き」が信頼を生む
自分の欲望よりも、周囲の必要に応える働き方を選ぶ人は、
自然と信頼を得るようになります。
家族を支えるために一生懸命働く親、
仲間のために動く同僚、
地域のために尽くす人――
その姿には、**「愛のある労働」**が宿っています。
それは派手ではなくても、確実に人の心を動かす働き方です。
このような姿勢を持つ人は、どんな状況でも必要とされる存在になります。
5. 「今」に応える人が、未来をつくる
「今この瞬間に、何を求められているか」――
この問いに誠実に向き合う人こそ、結果的に“使命の道”を歩みます。
人生には、自由に選べる時期と、選べない時期があります。
しかし、どんな状況でも「正しく働く」ことはできるのです。
- 誰かの必要を満たすために動く
- 自分の責任を果たす
- 喜んで「そのときにふさわしい仕事」を引き受ける
この積み重ねが、やがて本当にやりたいことへとつながります。
努力と誠実さは、必ずあなたを“正しい場所”へ導いてくれるのです。
まとめ:やりたいことより、「今、必要とされていること」
- 働く目的は「自分の満足」ではなく「他者の必要を満たすこと」
- やりたい仕事よりも、今求められている仕事を全うする
- 目の前の働きに誠実であることが、未来の可能性を広げる
- 正しく働くことは、“愛と責任”の表現である
テトスへの手紙3章14節は、こう教えています。
「差し迫った必要を満たすために、良い働きを学びなさい。」
やりたい仕事を探す前に、今この瞬間にふさわしい働きを全うすること。
それこそが、神の前でも人の前でも誇れる**「正しい働き方」**なのです。
