リーダーの心得――ペテロ第一の手紙5章2〜3節に学ぶ「人を導く者の品格」
リーダーの心得――支配ではなく、導くこと
ペテロの第一の手紙5章2〜3節には、リーダー(監督者・指導者)に向けた次のような勧めがあります。
「あなたがたのうちにいる神の群れを牧しなさい。いやいやながらではなく、神に従って自ら進んで行い、卑しい利得を求めてではなく、心を込めて世話をしなさい。割り当てられた人々の上に権威をふるうのではなく、群れの模範となりなさい。」(ペテロ第一5:2–3)
この箇所は、教会のリーダーに対して書かれたものですが、
現代の組織や職場にも通じる**「リーダーの本質的な心得」**を教えています。
1. リーダーは“支配者”ではなく“羊飼い”である
聖書が示すリーダー像は、「権力者」ではなく「羊飼い」です。
羊飼いは、羊を支配するのではなく、守り・導き・育てる存在。
それは、指導者の力の使い方を象徴しています。
リーダーとは、
- 人を押さえつける人ではなく、力を与える人
- 命令する人ではなく、導く人
- 利益を優先する人ではなく、人を大切にする人
人の上に立つということは、「人を使うこと」ではなく、
**「人のために責任を持つこと」**なのです。
2. “いやいや”ではなく、“進んで”導く姿勢を
ペテロは、「いやいやながらではなく、自ら進んで行いなさい」と強調します。
これは、リーダーの動機の純粋さを問う言葉です。
職場でも、立場上リーダーになることがありますが、
「仕方なく」「責任だから」と嫌々やると、その姿勢は必ず周囲に伝わります。
一方、自ら進んで人を導こうとする人は、自然と周囲に信頼と尊敬を生みます。
リーダーの姿勢がポジティブであれば、チーム全体も前向きになります。
リーダーシップとは、地位ではなく“心の在り方”なのです。
3. 利益のためではなく、良心に従って行動する
「卑しい利得を求めてではなく、良心に従って」とは、
リーダーに求められる倫理観と誠実さを示す言葉です。
自分の利益や名誉のために人を動かすリーダーは、一時的に成果を出しても長続きしません。
しかし、正義と誠実を軸に行動するリーダーは、長期的に信頼を築きます。
倫理観とは、誰も見ていない場所でも正しいことを選ぶ力。
その積み重ねが、リーダーとしての品格と信頼を形成していきます。
4. すべての人を平等に扱う心を持つ
リーダーのもとには、さまざまな人が集まります。
価値観・性格・働き方・得意分野――それぞれが違います。
中には、馬が合わない人や、扱いにくい部下もいるでしょう。
しかし、聖書は「割り当てられた人々を支配してはならない」と教えます。
つまり、リーダーの役割は「好き嫌いで人を判断しないこと」。
すべての人に公平に接し、それぞれの持ち味を活かせるよう導くことです。
本当に優れたリーダーは、“違い”を尊重し、チームの多様性を力に変える人です。
5. 模範となるリーダーは、言葉より行動で導く
ペテロは最後に、「群れの模範となりなさい」と述べます。
これは、リーダーシップの核心です。
人は、言葉よりも“行動”によって導かれます。
指示や指導よりも、リーダー自身の姿勢が最も強い影響力を持つのです。
- 自分が守れないルールを他人に求めていないか?
- 自分が避けている努力を、部下に求めていないか?
模範となるリーダーは、他人に求める前にまず自らの背中で示す人です。
その誠実さこそ、最も強いリーダーシップの証です。
6. 現代に生きる「羊飼い型リーダー」へ
ペテロの手紙が教えるリーダー像は、いまの時代にも深く響きます。
競争や成果主義が重視される社会の中で、
人を守り、支え、育てるリーダーはますます貴重な存在です。
“羊飼い型リーダー”とは、部下や仲間を自分の所有物ではなく、
一人の人として尊重し、その成長を助ける人のこと。
人の心を動かすのは、支配ではなく「信頼」と「愛」です。
まとめ:人の上に立つとは、誰よりも人を思うこと
ペテロ第一の手紙5章2〜3節が教えるリーダーの心得をまとめると、こうなります。
- 支配ではなく、導くこと
- いやいやではなく、進んで行うこと
- 利益ではなく、良心に従うこと
- 不公平ではなく、公平に接すること
- 言葉ではなく、模範として示すこと
リーダーとは、人を動かす力よりも、人を思う力に優れた人です。
どんな立場であっても、「羊飼いの心」を持つ人が、
周囲に信頼と希望を与える“真のリーダー”となるのです。
