常に模範的な存在を目指せ――テトスへの手紙2章7〜8節に学ぶ「信頼される指導者の言葉と行動」
常に模範的な存在を目指せ――信頼されるリーダーの原点
テトスへの手紙2章7〜8節には、リーダーとしての基本姿勢がこう記されています。
「あなた自身がすべての点で良い行いの模範となりなさい。教えるときには誠実さと威厳を示し、健全で非難されることのない言葉を用いなさい。そうすれば、反対する者も恥じ入り、私たちを悪く言うことができなくなるだろう。」(テトス2:7–8)
この箇所は、教会の若き指導者テトスに向けて語られた言葉ですが、
現代に生きるすべてのリーダー・教育者・上司・親に通じる普遍的な教えです。
“模範を示すこと”――それこそが、あらゆるリーダーシップの根幹です。
1. 「模範となる」とは、言葉でなく行動で導くこと
リーダーが最も意識すべきは、「言葉でなく行動で見せる」ことです。
どれほど立派な理念やビジョンを語っても、
行動が伴わなければ、部下やチームの信頼は生まれません。
「こうすべきだ」と口で指導する前に、
自らがその“あるべき姿”を体現する。
それができる人は、無言のうちに周囲を動かす力を持ちます。
職場でも家庭でも、最も影響力のある教え方は、
**「言葉」ではなく「背中」**なのです。
2. 誠実さと威厳――リーダーの二つの柱
聖書は、教える者に必要な要素として「誠実さ」と「威厳」を挙げています。
**誠実さ(integrity)**とは、私利私欲を交えず、純粋な動機で人を導くこと。
裏表がなく、言動が一致している人は、自然と信頼されます。
一方の**威厳(dignity)**とは、権威や地位によるものではなく、
内面的な落ち着きと責任感から生まれるものです。
誠実さが「信頼」を生み、威厳が「尊敬」を生む。
この二つを兼ね備えた人こそ、真のリーダーといえます。
3. 「健全な言葉」が人を立て、「軽率な言葉」が人を壊す
テトスへの手紙は、「非難されることのない健全な言葉」を用いるようにと教えます。
リーダーにとって言葉は、組織や人の雰囲気を決める“力”です。
励ましの言葉は人を成長させ、
皮肉や怒りの言葉は人を萎縮させます。
たとえば、
- 「どうしてできないんだ」ではなく、「一緒に考えよう」
- 「早くしろ」ではなく、「どんなサポートが必要?」
小さな言葉の選び方ひとつで、相手の心は大きく変わります。
リーダーの発する言葉には、責任と影響力があることを忘れてはなりません。
4. 「反対する者さえも黙らせる」模範の力
聖書は、「あなたを悪く言う者でさえ、恥じ入るようになる」と述べています。
これは、誠実に生きる人が持つ“静かな説得力”を意味しています。
誠実で、品位があり、言葉に偽りがない人は、
たとえ批判を受けても、やがて周囲から尊敬を集めます。
一方で、自己中心的で軽率な言動をとるリーダーは、
どんなに有能でも人の心を離してしまいます。
真のリーダーとは、説明せずとも信頼される人。
模範的な生き方は、最も強い説得力を持って人を動かします。
5. リーダーの影響は“日常の小さな行動”に現れる
模範的な存在であることは、特別な瞬間だけを意味しません。
むしろ、日常の中でこそリーダーの本質が表れます。
- 約束の時間を守る
- 感情的にならずに話を聞く
- 誰に対しても態度を変えない
- 失敗したら率直に謝る
こうした小さな積み重ねが、リーダーとしての信頼の土台になります。
模範とは、完璧であることではなく、
**「誠実に成長を続ける姿」**を見せることなのです。
6. 現代のリーダーに求められる“品格”とは
テトスへの手紙の教えを現代に置き換えるなら、
優秀なリーダーとは「信頼される人格者」です。
スキルや成果よりも、
- 誠実さ
- 一貫性
- 他者への敬意
- 責任感
が求められています。
模範的なリーダーは、組織やチームの“空気”を変え、
その存在だけで人に安心感を与えます。
「自分がどんな影響を与えているか?」――
それを意識することが、品格あるリーダーへの第一歩です。
まとめ:模範を示す者が、最も強いリーダーである
テトスへの手紙2章7〜8節が教えるリーダーの心得をまとめると、こうなります。
- 言葉より行動で導く
- 誠実さと威厳を兼ね備える
- 健全で人を立てる言葉を使う
- 批判されても揺るがない品格を持つ
- 日常の中で小さな誠実を積み重ねる
模範とは、見せかけの完璧さではなく、
一貫した誠実さと真摯な姿勢のことです。
リーダーは、誰よりも先に自らを律し、
その背中で人を導く存在でなければなりません。
「あなた自身が、良い行いの模範となりなさい。」(テトス2:7)
その言葉どおり、日々の働きと生き方の中で、
模範的なリーダーであり続ける努力を重ねていきましょう。
