「組織の癌」を見抜け──信頼を悪用する人からチームを守るリーダーの洞察力
組織には「見えない病巣」がある
どんなに理念が立派でも、どんなに優秀な人材が集まっても、組織は「人の集まり」である以上、内部から崩れるリスクを常に抱えています。
その原因のひとつが、**「組織の癌」**と呼ばれる存在です。
聖書の「ローマ人への手紙16章17〜18節」には、こう記されています。
「あなたがたに願う。分裂とつまずきを引き起こす者を警戒しなさい。そういう者たちは私たちの主キリストに仕えるのではなく、自分の欲に仕えているのです。甘い言葉とお世辞によって純朴な人たちの心を欺くのです。」
この警告は、現代の組織運営にもそのまま通じます。
表向きは「協調的で優秀」に見える人ほど、裏でチームを乱すことがあるのです。
1. 「組織の癌」はなぜ見抜きにくいのか
こうした人たちは、最初から敵意をむき出しにするわけではありません。
むしろ、**「上の人に気に入られようとする」ことや、「人当たりの良さ」**を武器にして近づいてきます。
彼らの特徴は次のようなものです。
- 上司には従順に見えるが、裏では不満を広める
- 誰にでもお世辞を言い、関係を利用する
- 都合が悪くなると他人のせいにする
- 純粋でまじめな人を味方に引き込む
一見「社交的」で「前向き」に見えるため、リーダーが気づいたときにはすでにチームの信頼関係が壊れかけていることもあります。
2. 組織の癌を見破るリーダーの視点
優れたリーダーほど、人の“言葉”ではなく“行動”を見ています。
たとえば、
- 会議や打ち合わせで他人の成果を自分のもののように話していないか
- チームの方向性よりも「自分の利益」ばかりを優先していないか
- 他人の悪口や噂話で盛り上がることが多くないか
こうした小さなサインを見逃さない観察力が、チームを守る力になります。
「言葉の上手さ」よりも、「一貫した誠実さ」に注目することが重要です。
3. 対処の基本は「距離を置く」こと
聖書の教えでは、「分裂を起こす者から離れなさい」とも言われています。
つまり、直接対立するよりも、まずは距離を取ることが防衛の第一歩です。
リーダーとしてできる対処法は次の3つ。
- 公の場で議論せず、冷静に事実で判断する
- 組織のルール・価値観を明確に伝える
- 信頼できる人たちとの情報共有を怠らない
「排除」ではなく、「健全な関係性を保つ」ことを意識するのがポイントです。
4. 信頼を悪用する人に負けないチーム文化をつくる
根本的な解決は、“信頼を悪用されない文化”を育てることです。
- 情報をオープンにし、陰口が通じない環境を整える
- 誰もが意見を言いやすい雰囲気をつくる
- 成果だけでなく「プロセス」を評価する
こうした取り組みを続けることで、「おべっか」や「裏工作」が通じない組織になります。
誠実な行動が正当に評価される環境では、分裂を狙う人は自然に居場所を失うのです。
5. リーダー自身も「誠実さ」を失わないこと
最後に大切なのは、リーダー自身が誠実であること。
「組織の癌」を見抜くには、人を見る目だけでなく、自分の心の透明さが必要です。
嫉妬や怒りの感情に支配されると、本当に信頼すべき人まで疑ってしまう。
だからこそ、常に冷静に、客観的に人を判断できる自分を保ち続けることが求められます。
まとめ:リーダーの使命は「守ること」
「組織の癌」はどんな職場にも潜んでいます。
しかし、それを恐れるのではなく、「誠実で透明なチーム文化」を育てることこそが最善の防御です。
リーダーの役割は、成果を上げることだけではありません。
チームを守ること、信頼を守ること、そして人を正しく見抜くこと。
それが、本当の意味での“リーダーシップ”なのです。
