「教える力のある人に任せる」―組織が育つ人材育成の本質とは
教える能力のある者に仕事を委ねよ ― 成長する組織の原則
「教える能力のある者に仕事を委ねよ」――この言葉は、聖書『テモテへの第2の手紙 2章2節』に記されています。古くから語り継がれてきたこの一節には、現代の組織やチーム運営にも通じる、人材育成の本質が凝縮されています。
多くのリーダーは、組織を発展させるために「自分が正しく伝える」ことに注力します。しかし本当に大切なのは、「正しく伝えられる人を育てること」です。どんなに素晴らしい理念や価値観も、それを次に伝える人がいなければ、やがて組織の中で風化してしまいます。
「伝える」より「伝わる」仕組みをつくる
理念や価値観は、言葉だけではなく「行動」と「文化」として共有されて初めて意味を持ちます。そのためには、リーダー自身が学んだことを忠実に理解し、内容をゆがめずに次の世代へと伝える必要があります。
しかし、全員に直接教えることは不可能です。だからこそ「教える力のある人」に委ねることが重要なのです。
教える力を持つ人とは、知識だけでなく、相手に合わせて伝える柔軟さや、誠実さ、そして学び続ける姿勢を持った人のこと。こうした人を見出し、信頼して任せることが、結果的に組織全体の成長を加速させます。
「任せる勇気」が組織を強くする
リーダーにとって最も難しいのは、「自分でやったほうが早い」と感じる仕事を他人に任せることです。しかし、育成とは「自分の手を離す勇気」から始まります。
任せるという行為は、相手を信頼し、可能性を信じる行為でもあります。もし失敗があったとしても、それは成長のチャンスです。リーダーは結果だけでなく、学びのプロセスを支える役割を担うべきです。
そして、任せる相手が「教える力のある人」であれば、その学びはチーム全体へと波及していきます。教えられたことがさらに次の人へ伝えられ、組織は自走する力を持つようになるのです。
「教える人」を育てる三つのポイント
では、どのようにして「教える力のある人」を育てればよいのでしょうか。ポイントは次の三つです。
- 理解よりも“伝達力”を評価する
知識量よりも、「相手が理解できるように伝えられるか」を重視する。 - 行動と姿勢で示す
言葉だけでなく、日々の態度で理念を体現する。背中で語れる人が、信頼される教師となる。 - 教える機会を意図的に与える
任せなければ、教える力は育たない。失敗してもリカバーできる環境を整えることが、成長への近道です。
組織の未来は「教える人」にかかっている
「教える能力のある者に仕事を委ねよ」という聖書の言葉は、単なる宗教的教えではなく、時代を超えて通用するリーダーシップの原則です。
組織が理念や価値観を共有しながら成長していくためには、「伝えられる人」を増やすことが何より大切です。リーダーがすべてを抱え込むのではなく、教える力のある人たちを育て、信頼して任せる。
その積み重ねが、やがて強い文化と自走するチームを生み出すのです。
まとめ
- 理念や価値観は「教える力のある人」を通じて広がる
- リーダーの役割は「教えること」ではなく「教える人を育てること」
- 任せる勇気が、組織の成長を促す最大の鍵
「教える能力のある者に仕事を委ねよ」――この言葉は、今を生きる私たちに、「一人で抱え込まず、共に育てよ」と語りかけています。
