脊柱側弯症の分類
脊柱側弯症は大きく以下の2種類に分けられます。
- 構築性側弯症:脊椎の構造的な捻れや変形によるもので、自然矯正は困難。特発性、先天性、後天性に分けられる。
- 機能性側弯症:筋・筋膜のアンバランスや姿勢不良など、可逆的な要因で生じる側弯。矯正可能な状態。
構築性側弯症のうち 特発性側弯症 が最も多く(80%)、その多くは思春期に発症し、特に女性に多いことが知られています。
特発性側弯症の特徴と進行メカニズム
特発性側弯症の典型的なカーブは 胸椎右凸・腰椎左凸のS字型。進行の流れは次の通りです。
- 矢状面の変化(脊椎のフラット化)
腰椎のモビリティが高い場合、腰椎屈曲が先行し、胸椎は伸展してフラット化。 - 前額面の変化(側方変位)
胸椎の安定性が失われ、右方への変位が起こりやすい。 - 水平面の変化(回旋)
本来と逆方向の回旋が特徴的に出現。
👉 臨床的には 矢状面アライメントの調整が最も上流で重要 であり、L2高位での腰椎前弯の確保がカギとなります。
腰椎前弯と多裂筋の役割
腰椎前弯の形成に重要なのは 多裂筋 です。
- 下位腰椎では多裂筋が脊椎伸展筋の80%を占める
- 凹側(右側)の多裂筋に脂肪変性が起こりやすく、不可逆的変化につながる
- 若年期からの多裂筋トレーニングが予防につながる
👉 臨床では 凹側多裂筋の等尺性収縮 を意識した運動(例:股関節外転+腰椎左側屈で右多裂筋を収縮)を指導すると効果的です。
臨床評価
- 前屈検査:凸側肋骨隆起の有無を観察
- X線によるCobb角測定:20–50度は保存療法の適応
矯正方向の確認には、胸椎の左回旋が抑制され右回旋が生じている点を見逃さないことが重要です。
保存療法と装具療法
- 保存療法:Cobb角20–50度 → 運動療法+装具療法
- 装具療法:アンダーアーム型やミルウォーキー型を用い、原則24時間装着
- 手術療法:Cobb角50度以上では適応
シュロス法のように 呼吸パターンの修正 を重視した運動療法は、変形抑制に有効です。
成長期における注意点
- 発症は小学校高学年~中学生が多く、進行は 成長スパート期に一致
- 女児10歳、男児11.5歳前後から注意
- 成長が止まれば進行はほとんど停止するが、重度例では成人以降も進行する可能性あり
臨床まとめ
- 脊柱側弯症の多くは特発性であり、矢状面から進行する
- 臨床介入では L2高位の腰椎前弯確保と多裂筋強化 が鍵
- 保存療法の適応範囲では 装具療法+運動療法 が第一選択
- 成長期に進行しやすいため 定期的なX線フォロー が不可欠