【防災投資は“今”がカギ】巨大地震から日本を守るのは「貯金」ではなく「インフラ整備」だ
公共投資はピークの半分以下に減少
日本の公共投資(公的固定資本形成)は、1995年には年間約48兆円に達していました。
しかし現在はその半分以下、実質ベースではピーク時の**55%**しか投資されていません。
第二次安倍政権期に一時的な持ち直しは見られたものの、依然として水準は低く、地方インフラの老朽化や災害対策の遅れが深刻化しています。
「財政健全化」という名のもとに公共投資が削減されてきた結果、日本の防災力は年々低下しているのです。
自然災害大国・日本に欠かせない防災インフラ
日本は世界でも稀に見る自然災害大国です。地震、豪雨、台風、噴火など、多様なリスクが常に存在します。
特に「南海トラフ巨大地震」が発生した場合の被害は、想像を絶する規模です。
政府の試算では、建物やインフラの損壊など直接的な被害が約170兆円、さらに生産活動の停滞など間接的損害が20年間で1240兆円に及ぶ可能性があるとされています。
GDPは大幅に縮小し、税収減による財政損失は約131兆円。
合計すると、実に1500兆円超の経済的被害となるのです。
「防災投資」は支出ではなく“未来への貯金”
こうした災害リスクを減らすには、事前の防災投資が不可欠です。
土木学会の報告によれば、38兆円の防災投資を行うことで、南海トラフ地震による被害を40%以上削減できるとされています。
つまり、「38兆円の投資」で「600兆円以上の損害」を防げるということ。
これこそが、**支出ではなく“未来への投資”**と呼ぶべき政策です。
「財政余力を残す」は本当に正しいのか?
一方で、財務省の主計官・尾崎輝宏氏は「南海トラフ地震に備えて財政余力を確保することが重要」と発言し、元財務官の神田眞人氏も「持続可能な財政構造の構築」を提言しています。
一見、堅実に聞こえるこの発言ですが、実際には「将来の災害に備えて今は支出を抑えよう」という意味です。
しかし、考えてみてください。
地震が発生した瞬間、政府がどれだけ“貯金”を持っていても、壊れた橋や道路、発電所はお金ではすぐに直りません。
防災とは“今、お金を使うこと”でしか成り立たない。
貯めることでは命も経済も守れないのです。
「支出を恐れる国」は災害に弱い国
個人であれば、耐震補強や家具の固定、非常食の備蓄といった準備が必要です。
同じように、国家規模の防災にも先行投資が欠かせません。
ところが日本では、「支出=悪」「公共事業=ムダ」というイメージが根強く、インフラ投資は後回しにされがちです。
その結果、災害が発生するたびに復旧費が膨らみ、かえって財政負担が増えるという悪循環に陥っています。
短期的な節約が、長期的には“超高コスト”を生む――。
それが、緊縮的な防災政策の最大の欠点です。
今こそ「備える政治」へ舵を切るとき
災害に強い国をつくるには、“貯金”ではなく“行動”が必要です。
予算を絞るのではなく、未来への投資として防災インフラを強化すること。
橋や道路、堤防、港湾、電力設備などへの投資は、被害の軽減だけでなく、地域経済の活性化や雇用創出にもつながります。
つまり、防災投資は「命を守る支出」であると同時に、「経済を成長させる政策」でもあるのです。
まとめ:防災の本質は「今、使う勇気」
財務省がどれほど“財政余力”を誇っても、壊れたインフラは預金では直りません。
防災の本質は、未来に備えて今、投資することにあります。
日本の命と経済を守るためには、支出を恐れず、国家規模での防災投資を拡充することが必要不可欠です。
「お金を貯める防災」ではなく、「お金を使う防災」へ。
その決断こそが、これからの日本を救う第一歩になるでしょう。
