筋筋膜性疼痛の定義と特徴
筋筋膜性疼痛症候群(MPS) は、筋肉や筋膜を起源とする慢性的な疼痛疾患です。特徴は以下の通りです。
- 鈍い痛みやこり感 が持続する
- 筋肉内に 硬結(トリガーポイント) が触知される
- 圧迫や伸展などの機械刺激で 関連痛(referred pain) を誘発する
- 血液検査やX線検査では異常が検出されない
このため、臨床では「検査では異常がないのに痛みを訴える患者」として扱われるケースが少なくありません。
線維筋痛症との違い
- 筋筋膜性疼痛:1〜2箇所の限局した筋に症状が出る
- 線維筋痛症:全身に広範な痛みが出現する
筋筋膜性疼痛は「局所性」、線維筋痛症は「全身性」という点で区別されます。
好発部位と代表的疾患
筋筋膜性疼痛は、姿勢筋(体幹を支える筋肉群) に好発します。具体的には:
- 後頭部 → 緊張型頭痛
- 頸部・肩甲部 → 肩こり(肩甲肋骨症候群)
- 背部・腰部 → 筋筋膜性腰痛
これらは国民の愁訴ランキングでも上位を占めています。
2019年の国民生活基礎調査によると:
- 男性:1位 腰痛、2位 肩こり
- 女性:1位 肩こり、2位 腰痛、5位 頭痛
👉 特に肩こりは、男女ともに最も多い症状のひとつであり、筋筋膜性疼痛に関連しているケースが非常に多いと考えられます。
発症メカニズム
筋筋膜性疼痛の主因は、運動不足や過度のストレス による筋緊張の持続です。
- 姿勢保持筋に過負荷がかかる
- 筋緊張が持続する
- 筋血流が障害される
- 疼痛物質が蓄積し、痛みを発生させる
つまり「筋の過緊張 → 血流障害 → 疼痛」という悪循環が、筋筋膜性疼痛の病態の中心にあります。
まとめ
筋筋膜性疼痛は、腰痛・肩こり・頭痛など国民の主要な愁訴の背景にある重要な疾患です。
- トリガーポイント形成が特徴
- 検査では異常が出にくい
- 姿勢筋に好発する
- 運動不足やストレスが誘因
臨床では「目に見えない痛み」を理解し、適切に評価・対応することが求められます。