人間にとって最も大切なのは「意志」──新渡戸稲造『人生読本』が語る“生きる力”の核心
「頑張る」という言葉の本当の意味
私たちはよく「頑張れ」「頑張ります」と言いますが、その言葉の意味を深く考えたことはあるでしょうか。
新渡戸稲造は『人生読本』の中で、「頑張る」とは“頑固に意地を張ること”だと述べています。
一見、ネガティブにも聞こえるこの言葉。しかし新渡戸は、「意地」とは決して悪いものではないと続けます。
意地とは「意志の基盤」であり、人間の内側にある“動かぬ決意”のこと。
つまり、「頑張る」とは、外に対して強がることではなく、自分の意志を貫くことなのです。
人は「知・情・意」で動く
新渡戸は、人間の行動を生み出す三つの要素として「知・情・意」を挙げています。
- 知:物事を理解し、判断する力
- 情:感じ、共感する心
- 意:行動を起こす力
人はこの三つによって動きますが、その中でも最も重要なのが「意志」だと新渡戸はいいます。
なぜなら、知識がどれほどあっても、感情がどれほど豊かでも、意志がなければ何も実現しないからです。
行動を決め、方向を定めるのは「意志」。それがなければ、知も情も空回りしてしまうのです。
「意志なき人」は、人間として立てない
『人生読本』にはこう記されています。
「意志なき者は、いかに人情が深くても、いかに知識があっても、人間とはいえない。」
この言葉は少し厳しく響きますが、まさに人間の本質を突いた一節です。
知識が豊富で思いやりがあっても、実際に行動しなければ現実は何も変わりません。
逆に、知識が乏しくても、意志の強い人は自らの手で人生を切り開いていきます。
意志とは「思いを形に変える力」。
どんなに立派な理想も、意志がなければただの夢で終わってしまうのです。
「知」や「情」は、意志によって導かれる
意志は、人生の舵取りのようなものです。
知識(知)は意志によってどこへ向かうかを定められ、感情(情)は意志によって制御されます。
たとえば、怒りや悲しみは自然な感情ですが、意志が弱ければその感情に振り回されてしまいます。
反対に、意志が強ければ、感情を自分の味方に変えることができます。
また、知識も同じです。
知識だけではただの情報の集まりにすぎませんが、「それをどう使うか」という意志が加わったときに、初めて知恵となります。
つまり、**意志こそが「知」と「情」を活かす原動力」**なのです。
意志を育てるための実践的な方法
では、どうすれば意志を強くできるのでしょうか。
新渡戸は、意志の強さは生まれつきではなく、「日々の小さな決断」で鍛えられると考えていました。
たとえば、
- 朝、二度寝せずに起きる
- 苦手な人にも挨拶をする
- 一度決めたことをやり通す
こうした小さな行動を積み重ねることで、意志の筋肉は少しずつ鍛えられていきます。
意志とは、「やると決めたことを続ける力」そのもの。
そして、どんなに小さな行動でも、“自分に打ち克つ”という意志の訓練になるのです。
頑固さは「弱さ」ではなく「芯の強さ」
現代では「頑固」という言葉がネガティブに使われがちですが、新渡戸の言う「頑固」は、信念を貫く強さを意味しています。
自分の意志を守る頑固さ——それは柔軟さと共にあれば、人生を確かな方向へ導いてくれる力になります。
つまり、「頑張る」とは“自分の意志を守ること”。
それは、他人に勝つためではなく、自分に恥じない生き方を貫くための姿勢なのです。
まとめ:人を動かすのは「知識」ではなく「意志」
新渡戸稲造は、人生を切り開くのは知でも情でもなく、「意志」だと断言しました。
- 意志があるからこそ、知識が生きる
- 意志があるからこそ、感情が力になる
- 意志があるからこそ、人は自分らしく生きられる
この考えは、100年以上経った今でも色あせません。
行動を生むのは意志であり、人生を形づくるのもまた意志なのです。
最後に
今日の社会では、「知識」や「感情的な共感」が重視されがちですが、それらを支えるのは常に「意志の力」です。
どんな困難にもぶれず、静かに意志を貫く人——それが新渡戸稲造の言う「真に人間らしい人」なのではないでしょうか。
明日を変えるのは、知識ではなく、あなたの意志です。
