自己啓発

一事に邁進せよ──新渡戸稲造『修養』に学ぶ、ひとつの道を極める生き方

taka

「極意」は一つの道に通ずる

新渡戸稲造は『修養』の中でこう述べています。

「何事においても、物の極意というのはすべてに通じるものだ。」

この一文は、彼の人生観の核心を表しています。
どんな分野であっても、本質を極めた人は、他の分野にも通じる「原理」を理解している。
だからこそ、新渡戸は「何でもよい、まずは一事に打ち込め」と説きました。

つまり、「一事に邁進せよ」とは、自分の選んだ道を通して、人生全体の真理に触れよという意味なのです。


一度決めたら「一筋に進む」

「いったん何かをなそうと決意したならば、それ一筋に邁進しなければならない。」

現代は、多様な選択肢があふれる時代です。
転職、副業、SNS、情報……何にでも手を出せる半面、
「一つのことを続ける力」が失われつつあります。

しかし、新渡戸稲造は100年以上前からこの問題を見抜いていました。

彼の言う「邁進」とは、ただがむしゃらに突き進むことではありません。
それは、覚悟を決めて一つの道を歩き続ける勇気です。

途中で迷っても、寄り道してもいい。
しかし、「この道で生きる」と心に決めたなら、
その意志を貫くことが大切なのです。


障害があっても、倒れても、立ち上がる

「途中で障害が生じてもそれを排除し、また途中で倒れても再び起き上がって進んでいかなければならない。」

新渡戸は、挫折や失敗を“例外”とは考えていません。
それは「道の一部」であり、むしろ避けて通れない修養の試練だと説きます。

障害を前にして諦める人は、まだ本気ではない。
倒れても再び立ち上がる人こそ、真に「邁進する者」なのです。

この考えは、武士道にも通じています。
武士の生き方は、勝敗ではなく「倒れても前に進む姿勢」に価値がある。
新渡戸が説く“邁進”とは、まさに不屈の精神を持つ生き方なのです。


「極意」に達するための唯一の道

「物事は、そのようにひたすら一筋に励むことによって、はじめてその極意に達するものなのだ。」

新渡戸は、「才能」や「環境」よりも「継続」を重んじました。
どんなに頭がよくても、どんなに恵まれた立場でも、
途中でやめてしまえば、極意には至れません。

逆に、凡人であっても、
一つのことを長く続ける人は、必ず深みに至ります。

それは勉強でも仕事でも趣味でも同じ。

  • 一つのことに集中すれば、やがて共通する原理が見えてくる。
  • どんな分野にも通じる「人間の本質」に触れることができる。

つまり、「一事に邁進する」とは、
自分という人間を深め、人生の真理に到達する修行の道なのです。


「多事より一事」──現代への教訓

新渡戸の時代には、「多芸は無芸」という言葉がありました。
現代では「マルチタスク」「多才」「器用さ」が称賛されますが、
それがかえって集中力の分散を招くこともあります。

もちろん、時代の流れに合わせて柔軟に動くことは大切です。
しかし、何か一つでも“自分の軸となる分野”を持つこと。
それが、他のすべての経験を意味あるものに変えてくれます。

新渡戸が言いたかったのは、
「選択肢を減らせ」ではなく、
**「心のエネルギーを一点に集めよ」**ということです。


邁進する人の3つの特徴

新渡戸稲造の思想をもとに、「一事に邁進できる人」の特徴を整理すると、次の3つになります。

  1. 自分の使命を明確にしている
     何のためにその道を進むのか、自分の中に目的を持っている。
  2. 困難を“修養の場”と受け止める
     失敗や障害を恐れず、それを成長の糧に変える。
  3. 小さな努力を毎日続ける
     派手な行動よりも、平凡な努力を絶やさない。

これらの姿勢こそ、「極意」へ至る道のりそのものです。


まとめ:一つの道を極めることが、すべてを照らす

『修養』第108節の教えは、次の3つに集約されます。

  • 一つの道に集中して邁進すれば、他のすべてに通じる真理が見える。
  • 困難や失敗は、邁進の過程における“試練”である。
  • 継続と誠実な努力こそ、極意に達する唯一の道である。

新渡戸稲造は、「一事に邁進せよ」という短い言葉に、
人間の生き方の核心を込めました。


最後に

新渡戸稲造の言葉を現代風に言えば、こうなります。

「ひとつの道を極めた人は、人生のあらゆる道を照らす。」

目移りする時代だからこそ、
一つのことに誠実であることが、最も尊い修養となります。

小さくてもいい、遅くてもいい。
ただ、一歩ずつ、一つの道を進み続ける。

その歩みの先にこそ、
新渡戸稲造が語った「極意」と「人生の真理」が待っているのです。

スポンサーリンク
ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました