新渡戸稲造『人生読本』に学ぶ——何事にも動じない心の準備をせよ
「心の準備」が、人生を安定させる
新渡戸稲造は『人生読本』の中で、こう述べています。
「人生においては、心の準備をしておくことが最も大切だ。
心の準備とは、何事があっても動じない心をもてるようにしておくことだ。」
人生は思い通りにならないことの連続です。
突然の不幸や予想外の変化は、誰の人生にも訪れます。
新渡戸は、その時になって慌てるのではなく、「あらかじめ心を整えておくこと」こそが最善の備えだと説いています。
「心の準備」とは、起こる出来事を完全に防ぐことではなく、
どんな出来事にも心が乱れないように、内面の力を鍛えておくことなのです。
「親の死」や「財産の喪失」にも動じない心
「親の死、財産の喪失、友人の裏切りなど、人生にはいろいろつらいことが起こる。」
新渡戸は、人生の現実を非常に冷静に見つめています。
誰にでも、避けられない悲しみや裏切り、損失は訪れます。
しかし彼は、それを**「不幸」ではなく「人としての試練」**と捉えます。
そして、それらに直面したときこそ、
心の鍛え方が試される瞬間だと言うのです。
「どんなにつらいことが起こったとしても、自分の心だけは動じないように準備しておくことが大切だ。」
ここに、新渡戸の修養の核心があります。
外の出来事を変えることはできなくても、心の反応を整えることはできる。
それが「心の準備」の本質なのです。
不幸にも、幸運にも動じない
「どんな不幸に出会っても、少しも動じることはないし、
逆に思いがけない幸運に出会ったときも、それにのぼせあがってうわついた行動をとることもない。」
新渡戸の「動じない心」は、不幸への耐性だけではありません。
彼は同時に、「幸運に浮かれない心」も大切にしました。
多くの人は、不幸には備えても、幸運には無防備です。
突然の成功や賞賛によって、慢心や油断が生まれ、
それがかえって人生を崩すことも少なくありません。
真に成熟した人とは、
「不幸にも取り乱さず、成功にも酔わない人」。
つまり、どんな状況でも「平静であること」を保てる人なのです。
「心の準備」は、日々の生活の中で鍛えられる
では、どうすればそんな「動じない心」を持てるのでしょうか。
新渡戸は、特別な修行ではなく、日々の暮らしの中の心がけが大切だと考えました。
たとえば——
- 物事をすぐに判断せず、少し間をおいて受け止める
- 小さなトラブルにも「これも人生の一部」と考える
- 成功しても「これで終わりではない」と気を引き締める
- 失敗しても「これで終わりではない」と希望を持つ
こうした小さな心の練習が、
やがて大きな出来事にも動じない「平常心」をつくります。
つまり、心の準備とは日常の修養そのものなのです。
「平常心」は、幸せを保つ最強の力
新渡戸が説く「心の準備」は、
単なる精神論ではありません。
それは、幸福の基礎を築くための実践哲学です。
人が不幸になるのは、出来事そのものではなく、
「心が動揺して平静を失う」ことによってです。
逆に、どんな逆境でも、心が安らかであれば、
その人はすでに幸せな状態にある。
「平常心とは、幸福と不幸の波に揺れない心である。」
新渡戸の言葉を現代に置き換えれば、
それは「メンタルの安定」「レジリエンス(心の回復力)」に通じる教えです。
彼が説く「心の準備」とは、最強のメンタルトレーニングなのです。
現代に生きる「動じない心」の価値
現代社会は、変化が激しく、ニュースやSNSなどで常に感情が揺さぶられる時代です。
そんな今こそ、新渡戸のこの言葉は輝きを増しています。
「心の準備とは、何事があっても動じない心をもてるようにしておくことだ。」
失敗やトラブルに備えるだけでなく、
成功や称賛にも冷静でいられる人。
そうした「安定した心」を持つことが、
最終的には信頼される人格につながります。
新渡戸の「動じない心の準備」は、
変化の時代をしなやかに生きるための普遍の哲学なのです。
まとめ:心の準備ができていれば、人生は静かに輝く
新渡戸稲造『人生読本』のこの章は、
あらゆる出来事を静かに受け止める“心の成熟”を教えてくれます。
「どんなにつらいことが起こっても、
自分の心だけは動じないように準備しておくことが大切だ。」
心の準備がある人は、
不幸の中にも落ち着きを保ち、
成功の中にも謙虚さを失わない。
それこそが新渡戸の言う「修養の完成」です。
外の出来事に揺れず、
心の中に静かな灯をともして生きる。
それが——本当の強さであり、人生の幸福の秘訣なのです。
