自己啓発

新渡戸稲造『自警録』に学ぶ——柔剛のバランスをとれ

taka
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「強さ」と「優しさ」は対立しない

新渡戸稲造は『自警録』の中でこう述べています。

「自分の思うところを貫徹するためには、いったん固めた決心を曲げてはいけない。
人からどんなことを言われても、それに惑わされない強い心をもち続けなければならない。」

人生を歩む上で、「信念を貫く力」は欠かせません。
人の言葉に振り回されたり、困難に直面してすぐ諦めたりしていては、何事も成し遂げられません。

新渡戸は、まずこの「剛」——すなわち意志の強さ、信念の堅さを重んじます。
しかし同時に、彼は次のように続けます。

「だからといって『剛』ばかりで、『柔』である部分をまったく失ってしまうとすれば、それは他人に不幸をもたらすだけでなく、自分自身をも不幸にしてしまう。」

強すぎる人間は、時に人を押しつぶし、自分も苦しめてしまう。
だからこそ、新渡戸は「柔」と「剛」を両立させることの大切さを説くのです。


「剛」だけの人は、心を壊す

「剛」とは、信念を持ち、曲げず、強く生きること。
しかし、それが行きすぎるとどうなるでしょうか?

  • 他人の意見を聞かなくなる
  • 自分の考えに固執しすぎる
  • 失敗しても引き返せない
  • そして、最終的には孤立する

新渡戸は、そうした一方的な強さの危うさを見抜いていました。
剛のみに偏った人間は、見た目には強く見えても、内面は脆い。
それはまるで、風に折れる硬い枝のようなものです。

本当の強さとは、「折れないこと」ではなく、
**「しなやかに曲がっても、また立ち上がる力」**なのです。


「柔」だけの人は、信頼を失う

一方で、柔らかすぎる心にも落とし穴があります。
優しさは大切ですが、

  • 相手に流される
  • 自分の意見を持てない
  • 困難から逃げる
    ようでは、信頼を得ることはできません。

新渡戸は、「柔」と「剛」をどちらか一方に偏らせるのではなく、
両者を調和させた人格を目指すべきだと説きました。

それが彼の言う——

「人は柔剛のバランスをうまくとってこそ、はじめて円満な人格を作り上げることができるのだ。」

という言葉の真意です。


「柔剛のバランス」は、まさに人間の品格

柔剛のバランスとは、単なる性格の問題ではなく、
人間としての成熟度を示す指標でもあります。

たとえば、

  • 信念を持ちながらも、人の意見に耳を傾ける。
  • 厳しく叱るときにも、相手を思いやる心を忘れない。
  • 目標を追いながらも、失敗を許す余裕を持つ。

このような「柔の中に剛があり、剛の中に柔がある」姿こそ、真の人格者のあり方です。

新渡戸は、武士道の精神を通して「強さ」を説きながら、
同時に「慈しみ」「思いやり」「寛容」をもって生きることの尊さを強調しました。

つまり、剛は骨格、柔は血肉。
どちらが欠けても、健全な人間にはなれないのです。


現代社会における「柔剛のバランス」

現代社会では、「強さ」が過剰に求められる傾向があります。
ビジネスでも競争でも、勝ち抜くために「剛」を磨くことが重視されます。
しかし、その裏で、ストレスや孤立、心の摩耗が深刻な問題になっています。

新渡戸の教えは、そんな時代にこそ響きます。

「剛の中に柔を保て。柔の中に剛を秘めよ。」

強くあれ。
しかし、固くなるな。
優しくあれ。
しかし、流されるな。

この「中庸の心」こそ、リーダーにも、教育者にも、親にも必要な姿勢です。
新渡戸はまさに、**時代や立場を超えて通じる“人間のバランス哲学”**を語っているのです。


柔剛のバランスを保つ3つの心得

現代に生かすなら、次の3つを意識することが大切です。

  1. 自分の信念を持ちつつ、人の意見を聞く耳を持つ。
  2. 人に厳しくする前に、自分にも柔らかさを向ける。
  3. 困難な時ほど、力ではなく心で乗り越える。

この3つを日々実践することで、
「柔剛のバランスをとる人格」が自然と育まれていきます。


まとめ:しなやかで折れない人間になる

新渡戸稲造『自警録』のこの章は、
“真に強い人とはどんな人か”という問いに対する、明快な答えです。

「人は柔剛のバランスをうまくとってこそ、
はじめて円満な人格を作り上げることができるのだ。」

強さだけでは人は孤立し、
優しさだけでは流される。
その中間にこそ、人間としての深みが生まれる。

柔らかく、しかし決して折れない心。
それが、新渡戸稲造の言う「円満な人格」であり、
現代を生きる私たちが目指すべき姿なのです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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