世界を切り開く覚悟を持て――新渡戸稲造『人生雑感』に学ぶ「人間活動の真の目的」
人間活動の目的は「世界の開拓」にある
新渡戸稲造は『人生雑感』の中で、次のように述べています。
人を教育することであれ、田畑を切り開くことであれ、人間活動の目的というのは、世界や社会を開拓して発展させていくことにある。
この言葉には、どんな仕事であっても「社会を良くするために存在する」という確かな信念が込められています。
教育、農業、福祉、経済――分野は異なっても、私たちが行うすべての活動は「誰かの未来を拓く行為」なのです。
単なる生活のための仕事ではなく、「世界を少しでも前へ進める」意識を持つこと。
これこそが、人間に与えられた最大の使命だと新渡戸は説いています。
開拓者に必要な3つの覚悟
しかし、世界を開拓する道は決して平坦ではありません。
新渡戸は、開拓に挑む者が持つべき「3つの覚悟」を挙げています。
① 金は儲けられない
ゆえに金の欲しい者はこれをしないほうがいい。
開拓とは、まだ誰も歩んでいない道を切り拓くこと。
当然、安定や報酬がすぐに得られるわけではありません。
教育者、研究者、社会起業家――こうした人々が直面する現実は、往々にして「金銭的には報われにくい」ということです。
しかし、それでも彼らが歩みを止めないのは、「お金以上の価値」を信じているから。
金銭を超えた使命感こそ、開拓の原動力なのです。
② 苦しい
ゆえに楽をしたい者はこれに向いていない。
新しい道を作るということは、常に困難との戦いです。
思うように進まない、理解されない、成果が出ない――そんな日々の中でも歩み続ける人こそ、本物の開拓者です。
新渡戸は、楽な道を求めるよりも「苦しみの中に意味を見出す」姿勢を大切にしました。
苦労を避けず、挑戦を恐れず、失敗を学びに変える。
それが、人としての成長と社会の発展を両立させる唯一の道なのです。
③ 世間からの同情は得られない
むしろ悪く言われることのほうが多い。ゆえに人から褒められたいと思う者はこれにあたらないほうがいい。
これは非常に現実的な指摘です。
新しい挑戦を始めるとき、周囲からの理解や共感はすぐには得られません。
時には「無謀だ」「意味がない」と批判されることもあるでしょう。
しかし、新渡戸はその孤独をも受け入れるよう促しています。
人の評価を求めるより、「自分の信念に忠実であること」を重んじる姿勢。
それが真の開拓者を形づくるのです。
現代における「開拓」の意味
この新渡戸の言葉は、現代社会にも通じます。
AIが普及し、変化のスピードが加速する今こそ、私たちはそれぞれの現場で「新しい地平を拓く意識」が求められています。
教育者であれば、子どもたちの未来を切り拓く。
企業人であれば、新しい価値を社会に生み出す。
医療者であれば、人の命と生活の質を向上させる。
どんな職業にも、「開拓者としての責任」があります。
報酬や称賛を求めるのではなく、「人と社会を少しでも良くしたい」という純粋な情熱を燃やすこと。
それが、新渡戸の言う「人間活動の目的」なのです。
まとめ:静かな覚悟を胸に、世界を拓く
新渡戸稲造の「人間活動の目的は世界の開拓にある」という言葉は、努力や苦労を超えた生き方を示しています。
- お金のためではなく、使命のために働く
- 楽を求めず、苦しみを糧にする
- 人の評価に左右されず、信念に従う
この3つの覚悟を持つとき、私たちはどんな仕事の中にも「開拓の喜び」を見出せるようになります。
世界を変えるのは、派手な成功者ではなく、静かに信念を貫く人。
あなたの小さな一歩が、社会という大地を耕す「開拓の種」になるのです。
