「今日があるなら、明日もある」――新渡戸稲造『修養』に学ぶ、前向きな人生計画の立て方
「どうせ明日はない」ではなく「明日もある」と考える
新渡戸稲造は『修養』の中で、次のように述べています。
世の中には、「人の命というのは、今日あっても明日はないかもしれない」などと言って、計画性のないその日暮らしをする人間がいる。
一見、「命のはかなさを知る」という謙虚な考えのように思えます。
しかし、新渡戸はそれを**“愚かな考え”**と断言します。
「人の命というのは、今日あるように明日もある」と考えるほうがより合理的なのだ。
つまり、人生を悲観的に捉えて怠惰に流れるよりも、
「明日も生きる」と信じて未来に備える姿勢こそ、建設的で賢明だというのです。
「今日があるなら、明日もある」――積極的な人生観
新渡戸は、命の有限性を理由に行動をやめるのではなく、
「だからこそ今日も明日も誠実に生きよう」と説きます。
今日はあっても明日はないかもしれないというのは消極的な考えである。
今日があるなら明日もあるだろうと考えて、さまざまなことを前もって計画し、準備するのが積極的な考えというものだ。
ここでのキーワードは**「積極的」**です。
未来を完全に予測することはできませんが、
「明日もある」と前向きに信じて準備をする――それが、人間としての責任であり、希望の表れなのです。
「無計画な生き方」は自由ではなく、怠慢である
「明日はわからないから、今を楽しめばいい」という考え方は、現代でもよく耳にします。
しかし、それは自由に見えて、実は未来を放棄した生き方です。
新渡戸稲造は、**「計画を立てること=生きることへの誠実さ」**だと考えました。
未来を信じ、計画を立てるという行為は、
「自分の命を最後まで大切に使おうとする意思」の表れなのです。
計画性とは「未来への信頼」
新渡戸の考え方の根底には、人間への希望があります。
「明日もある」と考える人は、未来や社会に対して信頼を持っている。
逆に、「どうせ明日はない」と考える人は、未来を拒絶し、
今この瞬間にしか価値を見出せなくなってしまう。
しかし、現実の人生は「今日」と「明日」の積み重ねです。
だからこそ新渡戸は、未来を信じて準備することが、最も理性的で積極的な生き方だと説いているのです。
計画性は「希望の習慣」
計画を立てるという行為は、単なるスケジュール管理ではありません。
それは、「未来を肯定する練習」です。
- 1日の計画を立てる → 時間を大切にする心が育つ
- 1年の目標を立てる → 自分の軸が定まる
- 人生の計画を立てる → 不安よりも希望が勝つ
こうした小さな積み重ねが、「計画性のある人間」をつくります。
新渡戸の言葉を借りれば、それは「修養(心の鍛錬)」でもあります。
「計画的に生きる」ための3つのポイント
新渡戸の教えを現代の生活に落とし込むと、次の3つの実践が効果的です。
① 「行き当たりばったり」をやめる
思いつきではなく、「何を」「いつ」「どうやって」行うかを明確にする。
たとえ小さなことでも、意図を持って行動することで、毎日の充実度が変わります。
② 「予備日」「余白」を作る
計画を立てるときは、予定を詰め込みすぎず、心の余裕を確保する。
柔軟な計画こそ、長く続けられる秘訣です。
③ 「理想」と「現実」を行き来する
夢や理想を描くだけでなく、現実的なステップを設定する。
今日できる小さな行動を、明日への橋渡しにしていくことが重要です。
「今を生きる」と「計画的に生きる」は両立する
新渡戸の考えを誤解してはいけません。
彼は「明日がある」と信じることを勧めましたが、
それは「明日を待て」という意味ではありません。
むしろ、今日を誠実に生きるために、明日の準備をするということです。
計画とは、今を無駄にしないためのツール。
「今」と「未来」をつなぐ、最も人間的な行為なのです。
まとめ:計画する人は、人生を信じる人
新渡戸稲造の「計画性をもて」という教えは、
単なる効率論ではなく、生き方の哲学です。
- 「明日はない」と考えるのは、人生への諦め
- 「明日もある」と信じて準備するのは、人生への希望
- 計画性とは、希望を形にする行為
明日を信じるからこそ、今日を丁寧に生きられる。
そして、今日を積み重ねることで、よりよい明日が築かれる。
新渡戸稲造が『修養』で伝えたかったのは、
「未来を恐れるな、未来を信じよ」という前向きなメッセージなのです。
